第16楽節『光と闇の王子』

アースガルドの男達
今回は『神々の中で最も美しい』としつこく強調されているバルドゥル神のお話(*’ヮ’)

ROの原作である漫画『ラグナロク』では主役を張るバルドゥルですが、神話では地味な存在(・ω・)
ちょこっとしか出番が無いよ…?
投槍神話の法則『原典で地味な神様=真面目な性格で仕事に打ち込んでいたから冒険譚が無い』発動!
神話での実際の描写も、誠実な好青年と記されています。

しかし、このバルドゥル王子にも奇妙な設定があるのです…。
(※今回は捏造成分を多く含有します)


北欧神話ロイヤルファミリーの図
今は昔。
新婚ほやほやだった最高神オーディンと正妃フリッグの間に、二人の王子様が生まれました。

バルドゥル
長男はバルドゥル。

彼は生まれた時から体がピカピカと輝いている光の神でした。
バルドゥルとは『輝かしい栄光』という意味。
『実際の北欧社会で祠を建立して祀られた神ではない存在』(神話に名前が出てくるだけ)なので、具体的な担当属性は不明瞭ですが、どーも法律・秩序を司るという設定らしい。
事務方の神様ってことね(*’ヮ’)
アースガルドの正統な継承者として全神様の期待を一身に受けたバルドゥルは、端整な容貌で優しい性格の好青年に成長しました。
彼はどんな神や人間からも愛され、第3話で敵陣の巨人娘スカジから求婚される程。

ヘズ
次男はヘズ。

彼は生まれた時から目が見えませんでした。
ヘズとは『戦争』という意味なので全盲ながら軍神だったよーです。
座頭市みたいな戦い方だったのかしら(・ω・)?
ヘズはオーディン・フリッグ夫妻から生まれた嫡出子ではありましたが、第二子な上に盲目であったため、神々の輪の外に一人でいることが多かったみたい。
フリッグがバルドゥルを自慢することはあっても、ヘズの名前が話題になることはありません。
すごーく差別的な表現をすると、視力を持たないヘズは出来損ないの神っていうこと。
大昔の戦国時代な北欧で、戦場に出るべき男子が盲目というハンディを負っていた場合、社会的にどんなポジションに置かれるか。
そこら辺の事情は想像してみて下さい。

日陰の身であったヘズは、それでもヒネたところの無い、大人しくて穏やかな性格の神に成長しました。
彼の内心がどうであったかは分かりませんけれど…。

さて、今回記事のキーポイントです。
次期最高神として期待を集めていた嫡男バルドゥルですが、たった一つだけ欠点がありました。
それは『争い事の調停がド下手』ということ。
ワケワカラン裁定を下す上に、超ガンコで判決を絶対に覆さなかったのだそうです。
…司法神じゃないのかよ…(゚Д゚;)
この性質は明らかにオーディンの遺伝ですね(‘◇’*)
知識の神オーディンの血を引いたバルドゥルは『法学』の知識は豊富だったけど、机上の学問だけで実務スキルが伴っていなかった…というのが俺の考え。
アースガルドの第一王子は具体的にはどんな風に『調停がド下手』だったのでしょうか?

※ここからは伝承を下敷きにした捏造です。

ある日のこと。
バルドゥル殿下は一人でお散歩に出かけました。
泉のほとりまで歩いて行った彼は、大変なモノに出くわしたのです……!
それは…

バルドゥル、水浴び中のナンナを目撃
水浴びをしている女神ナンナの一糸まとわぬ姿でした!
(※全年齢対象ブログだからコモドバカンス服で我慢してね☆ミ)

ナンナ『ふんふふんふ~ん♪』
バルドゥル(ああああああうわあああああああああ、モロに見てしまったああああああああ!!)

ナンナ嬢は覗きの存在にまるで気づいていません。
バルドゥルは慌てふためきながら、その場を離れたのでした。
こーゆー場合、俺だったら『ヤッター、おっぱい見ちゃった!(ノ∀`*)ラッキー!』とコッソリ黙っていますが、この王子様は違いました。

バルドゥル(うぅ…、父上があんなんだから自分は女性を大事にしようと思っていたのに、何と言う失態だ…)

真面目な性格のバルドゥルは自分の破廉恥な行いに苦悩したのです。
悪意の無い事故なのにな…。
ナンナさんの詳しいスペックは不明ですが、フリッグのメイドであるフッラと懇意にしてたらしいので、メイド同僚だったのかも知れません(・ω・)
そんなに重要な役職では無かったっぽい女神ナンナは、何を隠そう第二王子ヘズの許婚でした。

バルドゥル(嫁入り前の娘さん…しかも弟の婚約者の裸を見てしまうなんて;;盲目のヘズには一生見ることができないナンナの体をバッチリ見てしまった…orz かくなる上は…!)

考え抜いた末に、光の神は決意を固めました。

翌日のこと。
神様の溜まり場グラストヘイムで、バルドゥル王子はこう言ったのです。


バルドゥル『神々の皆様方に宣言します。このバルドゥルは女神ナンナと結婚します!
オーディン『はぁ?』
フリッグ『な、何ですってーー!?』←ナンナの推定上司
ナンナ『エエー!?』
ヘズ『あ、兄上…ナンナは自分と婚約していますが…?』
神々『バルドゥル王子が御乱心だ…( ;゚д)ザワ( ゚д゚;)ザワ(д゚; )』

神々は当然、驚きを隠しませんでした。
バルドゥルが指差したナンナは既に実弟と婚約済みの娘、しかもあんまし格の高い女神ではなかった(推定)ので、第一王子の妃には不釣合いだったに違いありません。

バルドゥル『実は昨日、その…ナンナ嬢が水浴びしている所を…み、見てしまいました…///』
ナンナ『エエーーー!?Σ(゚Д゚*)』
ヘズ『……!』
バルドゥル『決して故意ではありません…が!嫁入り前の娘さんの裸を見てしまった以上、責任を取って結婚します!
オーディン『いや…お前…その結論は…』
バルドゥル『父上は黙っていて下さい!自分の裁定に二言はありません。絶対に結婚します!
神々『ホゲー(゚Д゚(゚Д゚(゚Д゚ )』
オーディン(見たって減る物でも無いだろうに…)

パッシブスキル超ガンコLv10で、バルドゥルは自分の考えを曲げようとしません。
渋々ながら神々は結婚を認めることとなりました。

バルドゥルとナンナの結婚式
こうして女神ナンナは元々婚約していたヘズではなく、兄のバルドゥルに嫁いだのです。

バルドゥル『ナンナさんは責任を持って自分が幸せにします!』
ナンナ『ふつつか者ですが、よろしくお願いします』
神々『お、おめでとうございます(´д`;(´д`;(´д`;)』
ヘズ『……』

またしても結婚の経緯がイミフな夫婦がアースガルドに誕生/(^o^)\
ウーン、青天の霹靂だけどナンナさんにとっては悪い話でもないですよね。
第二王子ヘズではなく、第一王子バルドゥルの妻となれた訳だし…。
フレイと同じく好青年神なバルドゥルは女遊びなど一切せず、妻を大事にしました。
この『真面目な貴公子』像は古代北欧人にとって大事な物語テンプレだったのかな(・ω・)?

バルドゥル一家
バルドゥルとナンナはラブラブな夫婦生活を送り、平和を司る神フォルセティが生まれました。
フォルセティは係争の仲裁を得意とし、父の欠点を補足する存在になったそうな。

めでたし、めでた…。
……。


光を司り、身体から輝きを放つバルドゥル。
誰からも愛される彼の周囲には、常に人垣が絶えなかったと言います。
一方、盲目で永遠の闇の中にいるヘズ。
日陰者の彼は婚約者を兄に持って行かれてしまう(しかもナンナはバルドゥルを心から愛した)
ヘズには妻の記述が無いので、おそらく生涯独身。
同じ最高神夫妻から生まれた二人の王子は、どうしてこんなにも差があるのでしょう。
それは『この世には抗うことのできない運命』があるから。
神々すら『運命』には逆らえない。
人生とは常に不条理であり、無情であり、努力では覆せないと。

二人の王子に架せられた運命は巡り巡って悲しい結末を迎えます…。
そのお話はまたいつか。

この一文で〆ることが多いけど、本当に神話終末期まで書けるのかな…(*’ヮ’)
途中で心が折れそうだ。

【追記】
投槍北欧神話はスノリ=ストゥルルソンが編纂した『散文エッダ』をベースにしてるのですが、今回記事は『デンマーク人の実績』に記されている物語を下敷きにしました。
この二つの神話は世界観が大きく異なっており、後者では『邪悪な神バルドゥルが人間ヘズの婚約者に横恋慕する』とかゆー話になっています。
二人は兄弟ですらない…(゚Д゚;)
神話っていうのは時代・土地によって設定やストーリーが大きく変わるものだからうんたらかんたら。

投槍北欧神話では『強引にでも辻褄を合わせたストーリーにする』とゆー方針を取っているので、『散文エッダ』の設定に矛盾しない様に『デンマーク人の実績』のエピソードを無理矢理合成しました(゚Д゚)
参考文献の本を読んでも、上記通りの話は載ってないよ!
学術的な北欧神話考察サイトじゃないから、その辺は大目に見てね☆ミ

  1. 女の子と遊ぶだけ遊んで放ったらかしのオーディンよりは真面目だと思うのよ(*’ヮ’)

  2. バルドゥルが真面目すぎて、結果的に弟を苦しめることに…?
    バルドゥルに光が行きすぎて、ヘズに影の部分が全部いってしまったような感じでヘズがちょっとカワイソス(´・ω・`)
    マターリでいいから書き切ってほしいですん(´ω`)

  3. ひぃ、アゲハのコメントに分かり易く要点が集約されてるぅ。
    みんなのコメントをパッチワークして、さも自分が考えました的な論文を作ろう…。

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