第32楽節『戦乙女ヴァルキリー』

ヴァルキリー
今夜は戦場に舞う戦乙女ヴァルキリーについて。


ヴァルキリーは現代のバイクや軍用機、SFアニメのマシン、RPGゲーム、ロックバンド…などなど、様々な所で名前を拝借されていて、北欧神話を未読の方にも馴染み深い名称です。
多分、日本ではオーディン・ロキより知名度が高いんじゃね…?

ヴァルキリーとは個人名ではなく女神様のチーム名というか、職業名のこと。
直訳すると『戦死者を選別する者』という意味です。
戦”乙女”って和訳は語義にあんま忠実では無いですね。
しかし戦死者スカウト役が乙女なのは、非常に重要な意味があるんで良い訳語でしょう。
そこはまた後述。
古ノルド語ではヴァルキュリア、英語ではヴァルキリー、ドイツ語ではワルキューレの発音です。
ROの公式表記がヴァルキリーなので投槍神話では英語読みを採用しております。

戦死者の館ヴァルハラ。オーディンとフレイヤで戦死者の魂を山分けする。
ヴァルキリーの本拠地は戦死者の館・ヴァルハラ。

上司はオーディンとフレイヤ。
説話によっては『ヴァルキリーのリーダーはフレイヤ』と明言されているので、最高責任者はオーディン、現場指揮官はフレイヤだったんじゃないでしょーか。
実働部隊であるヴァルキリーはフレイヤ・フリッグ・イドゥンなどの有名女神より、ちょっと格が下がる様です。
半神半人の存在だったとか、オーディンの養女だったとか書いてあります。
それではヴァルキリーのお仕事をダイジェストで紹介(・∀・)

【戦乙女のお仕事】
人間界ミッドガルドの戦場で兵士達を加護し、武勲を挙げさせます。
  ↓
中でも特に優秀な兵士を計画的に戦死させます。
  ↓
魂をヴァルハラに持って帰り、オーディン・フレイヤが山分けして自分の配下にします。
(この時、オーディンを差し置いてフレイヤが先に有力な戦士を自軍に選び取る説があります)
  ↓
戦没者の魂は神様パワーで転生者(エインヘリヤル)として甦ります。
  ↓
転生者は世界の終末ラグナロク戦争に備え、毎日ヴァルハラで特訓をします。
ヴァルキリーは特訓のコーチもするよ。

大体こう。
ROでは冒険者が自ら転生に赴きますが、神話ではヴァルキリーに殺されて天に召し上げられます。
兵士達にとって戦乙女とは戦場の守護神でもあり、死神でもありました。
もう一つ大事な仕事を務めていますが、これも後述!
転生者(エインヘリヤル)については別の機会に解説します。
これまで紹介した神話で登場した戦乙女は…

トールの娘スルーズ
雷神トールの娘・スルーズ(第17話

運命の女神スクルド
未来を司る女神スクルド(第14話

ノルン(運命の女神)三姉妹の末娘スクルドさんは、一人だけ戦乙女を兼任しているそーです。
スクルドのみ戦士の素養があったのか、それともただのアルバイトなのか…。
ただし運命神のスクルドと戦乙女のスクルドは同名の別人だとゆー説もあります。
北欧神話は同名キャラが多過ぎなんだよ(`Д´;)

ROに名前が出てくる戦乙女は…
スコグル、フリスト、ゲンドゥル、ランドグリス、ブリュンヒルデ、レギンレイブ、エルルーン、アルヴィトなど。
前述のスルーズを含め、統合サーバ名称に多く採用されました(・ω・)

世界的に最も有名なヴァルキリーは、人間の英雄ジークフリードとの悲恋に苦しんだブリュンヒルデさん。
ワーグナーが30年かけて作曲した、上演するのに4日かかるクソ長いオペラ『ニーベルンゲンの指輪』で、その姿を鮮やかに描いています。
俺は流石にオペラ全編を鑑賞したことは無いです…。
作中の楽曲『ワルキューレの騎行』は映画やTVCMで頻繁に使われているので、誰でも一度は耳にしたことがあるはず。
『ニーベルンゲンの指輪』は北欧神話を下敷きにしてはいるものの、ROの機軸である『スノリのエッダ』とはだいぶ設定が違います。
まぁ…そのうちテキトーにアレンジしたスーパー圧縮版で紹介する…かも知れない…。

余談ですが、ROでは”Siegfried”を『ジークフリー』と表記してますが、ドイツ語の音節末のdは”t”と発声するので『ジークフリー』がより望ましいカタカナ表記ではないでしょうか。

さて。
戦場の女神であるヴァルキリーは槍や剣を携え、甲冑を纏い、背に翼を生やした(もしくは空飛ぶ馬に乗っている)美しい乙女の姿という設定です。
翼に関しては白鳥やカラス、鷲の羽が生えてたとか、兜に羽飾りがついてたとか。
ROの戦乙女ネーミングアイテムもレギンレイヴの翼・フリストの帽子・ヴァルキリーヘアバンドなど、羽をあしらったデザインが多いですね。

カラスから戦乙女に進化
前回『フギンとムニン』にて
「元々の戦死者スカウト役はカラスだったのが転じて、羽を持つ乙女ヴァルキリーの形になった」
「羽のモチーフはカラス時代の名残」
と投槍解説しました。
そもそもなんでカラスが美女に変更されたのか?というルーツについて、今回は趣向を変え神話スタイルではなくリアル歴史を捏造…ゴホン…想像を交えつつ解説します。

戦場
今は昔。
古代の北欧にて各部族が血で血を洗う、激しい合戦を繰り広げていました。
北欧神話の中心的な神様が全員軍神であることからも、当時の戦国時代ぶりは伺えます。
しかし…

兵士『痛いのヤダよ、死にたくないよ(‘A`)』

どんなに強い戦士でも死ぬ時は死ぬし、本能的に死は怖いものですから、戦いが長引けば自然と士気は下がってしまいます。
そこで当時の王侯は考えました。

王様『勇敢な戦没者はオーディン様の下で、英霊エインヘリヤルに転生できるってことにしよう( ^ω^)』
大臣『ナイスアイディアでございます、陛下!』
王様『死体にはカラスが群がるし、あれが最高神の使いでいいや( ^ω^)』
大臣『さっそく宣伝致しましょう!』

フギン&ムニン
こうして戦死者の肉体をついばむカラス達は魂の運び手として見なされるよーになり、オーディン直属の死の鳥・フギン&ムニンが誕生しました。

兵士『死んでもヴァルハラへ導かれるなら悔いはない!(`・ω・´)シャキーン』

ここでポイントになるのは、戦死したら誰でも天国に行ける訳じゃなく、神に選ばれる程の武勇を備えてないと駄目ってところです。
兵士達の士気はモリモリ上昇し、死後の栄誉を勝ち取るべく一生懸命に戦う様になりました。
しかし時代が流れると…

兵士A『カラスにハラワタ突っ付かれてヴァルハラ行っても嬉しくねーし(‘A`)キメェ』
兵士B『田舎に帰って女の子と結婚したいよ(‘A`)』
兵士C『おんな!おんな!(‘A`)o彡゚』

次第にフギン&ムニンの威光は薄れ、戦意が目に見えて落ちてゆきます。
そこで王侯は再び士気発揚の手法を考えました。

王様『ったくよー、今時の若いモンは女の尻ばっか追いかけやがって…(;^ω^)』
大臣『ここは一つテコ入れが必要ですな』
王様『カラスっつーの止め止め!神の使者は女の子にすっぞ( ^ω^)』
大臣『ナイスアイディアでございます、陛下!』
王様『いきなり変更し過ぎると不自然だから、羽が生えた娘にしとこう( ^ω^)』
大臣『さっそく宣伝致しましょう!』

カラスから有翼人に
こうしてカラス型のフギン&ムニンは御役御免となり、有翼人型のヴァルキリーが登場したのです。

当初の見た目は単純に鳥と乙女を足して2で割った、ギリシャ神話のハーピーみたいな感じ。
翼を持つ娘姿の神はウケが良く、若い兵士達は喜んで死地へ向かう様になりました。
…が、ちょっと問題点があったのです。
見た目こそ人間型に近づいたもののデザインが洗練されておらず、ただの鳥女だった上に、戦場で死体をむさぼり喰うというカラス時代の設定をそのまま使っていたので、時を経ると…

兵士D『ヴァルキリーって見た目こわいよ(‘A`)』
兵士E『俺らの内臓をむしゃむしゃ食べる女なんて好みじゃない(‘A`)』
兵士F『可愛いおんな!可愛いおんな!(‘A`)o彡゚』

やっぱり兵士はやる気ナッシングに陥ったのです。
そこでまたしても王侯は考えました。

王様『っざけんじゃねー!士道不覚悟は死罪じゃあああああ!!(#^ω^)』
大臣『お気持ちは分かりますが…あれでも貴重な戦力ですんで、テコ入れで何とか…』
王様『じゃあ戦乙女は全員、美神フレイヤ直属の美少女戦士!華麗な甲冑!(#^ω^)』
大臣『屍食性も不人気でございまして…』
王様『カラス要素は羽だけ残して削除!(#^ω^)』

ヴァルキリー最終進化形態
ヴァルキリー最終進化形態。

こうして仕様変更を繰り返しまくった末、『ヴァルキリー(戦死者の選び手)』はカラスから目も眩む程の美女へと変貌を遂げたのです。
変わり過ぎだろー!?(;´Д`)
更には駄目押しに…

王様『ヴァルハラでは戦乙女がマンツーマンで手取り足取り腰取り特訓してくれる!(#^ω^)』
大臣『ナイスアイディアでございます、陛下!』
王様『あと夜は戦乙女のお酌で天上界の美味い酒が飲み放題!(#^ω^)』
大臣『さっそく宣伝致しましょう!』

ヴァルハラにおける死後の英雄生活が考案されました。
昼間はラグナロク戦争に備えて戦乙女と武道鍛錬。
夜は戦乙女がホステス役のキャバクラ・ヴァルハラ…ゴホンゴホン…オーディン主催の酒宴で英気を養う…。
男心を一網打尽にするスーパー都合の良い女が完成したのです。

このヴァルキリー最終形態は爆発的な人気を呼び、古代北欧の地は彼女達に捧げる祈りで満ちました。
後世、キリスト教によってスカンジナヴィアの北欧神信仰が駆逐されても麗しい戦乙女の威光は消えず、彼女達をモチーフにクリスチャンの画家が絵に描いたり、詩人が謳ったりしています。
その美しさは現代まで姿を留め、今日においても我々が目にできるのでした。

めでたし、めでたし。

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まぁ…本当はここまで恣意的に神様設定を操作した訳じゃないですが、カラスを戦乙女に進化させた心理的な変遷は大体こんな感じらしいです。
どこの国でも『宗教』が王侯にとって人心の掌握・統治の道具であった側面は否定できないので。
若者を死地に送り込むために『英霊になれば冥土でホニャララできる!』ってのは、全ての宗教の常套句ですね。

おしまいに。

オーロラを纏ったヴァルキリー(?)
緯度の高い北欧諸国では冬の夜、2~3日に1回はオーロラを観測できます。
古代人は夜空に浮かぶ虹の帯を見て『あれはヴァルキリーの甲冑が輝いてるんだ!あの光の先にヴァルハラがあるんだ!(*’ヮ’)』と考えたそうな。
オーロラ=ヴァルキリーだなんて、これはもう相当のド美女を期待してたに違いない。
激しい稲妻からは勇ましい雷神トールを、優雅なオーロラからは美しい戦乙女ヴァルキリーを発想した古代の戦士達。
戦いに明け暮れる日々にも、空を仰ぎ見て神々の世界に想いを馳せたのですね。

次回は↑これらの前提を基に捏造神話でお送りします。

  1. 更新されてる‼
    次回は夏の増刊号みたいな勢いでの更新ペースだといいなと、淡い期待をもちつつ楽しみに待ってます♪( ´▽`)

  2. Σ(゚Д゚;)
    あ、淡い期待のままお待ち下さ…い…。

  3. 面白いッスー!!
    その辺の解釈本読むのより断然わかりやすくて楽しいです
    ROに出てくる神様の名前も、実はチョイ役だったりが多い事に意外さを感じています

  4. 中村美咲&土居円&押方大地&中川大河@¥ より:

    初めまして!本日初めてこの「投槍北欧神話」を拝見させていただきました。
    また次のお話も期待しています!!
    いつまでも待っています。

  5. 辺境のブログにわざわざ恐れいります(;´Д`)
    秋もあんまり更新できないので、是非お近くの図書館で北欧神話をレンタルしてみて下さい…。
    >キッドさん
    スノリエッダだとオーディン・ロキ・トール辺りがメインで、ROアイテムに使われてるマグニやヘルモーズなんかは出番が少ないですね。
    でも『出番の無い神=真面目に仕事してたから冒険譚が無い』の法則を脳内補完すればオッケーです(^ω^)
    >中村美咲&土居円&押方大地&中川大河@¥さん
    な…名前…名前、長くないすか…!?
    次からは多分、フレイヤのお話になります…多分…。

  6. SAO読んでたらトール花嫁編が出てきたから見にきた。
    トールの変装ふれいやたん可愛いかった

  7. SAOってあらすじしか知らないんだけど、トールとか出てくるのか…(゚Д゚;)
    よ、読んでみようかな…。

  8. あれ作者が元ROとウルティマオンラインプレイヤーだからなんとなくスキルとか設定とか分かるし普通に面白い。
    ちなみにトールとかは8刊w

  9. 8巻かよ…。
    ブッコフにあったら買うかも知れない…。

  10. 初めまして。
    北欧神話の研究、解析をしている途中、資料を漁っていてこのHPを見つけました。
    実に面白くわかりやすいです(^^)
    次の話も、首を長くして待っております!

  11. 初めまして(・ω・)n
    書いた後から解釈ミスに気づいてコッソリ直したりしてますが、何かのお役に立てば嬉しく思います。
    正しい知識は学者先生の書いた参考文献をお読みになって下さい(;^ω^)

  12. 初めまして。
    興味本位でロキについて検索していてこのサイトに辿りつきました。
    北欧神話についての私の知識はほぼ皆無だったのですが、考察も含め北欧神話の魅力とカオスっぷりを分かりやすく描かれていて、ついつい時間を忘れて読みふけりました。
    こんなのが神様でいいんだろうか…と頭を抱えたくなりますが、1番好きなのは最もはた迷惑なロキだったりします。
    神話を噛み砕くのもなかなか大変な作業かと思われますが、お話楽しみにしています!

  13. コメント頂き、ありがとうございます。
    なかなか更新できなくてスミマセン。
    ロキ好きな人は多いですね!
    僕のオススメはオーディンなんですが…、やっぱり話のオモシロ度で言うとロキの活躍(??)ぶりの方が目立ちますね。
    ロキが登場するコメディはまだあります&神話末期の荒ぶるロキも魅力的なので、続きを乞う御期待…いや、北欧神話の本をお読みください…。

  14. 最近更新されませんね…
    次回の記事を首を長くして待ってます。

  15. 神話本編じゃないけど、ちょこっと更新してみました…(*’ヮ’)

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