投槍北欧神話・第17楽節『トールの問答・1』の続きよ(‘◇’*)
今は昔。
出張から帰還した雷神トールは自分の預かり知らぬところで、神々が武器代金のカタとして娘スルーズを嫁に出す契約を結んだと知り、びっくり仰天しました。
しかも相手はブサイクでキモオタな種族『黒妖精』でしたから、トールは猛反対です。
アルヴィース『婚約不履行したら訴えるよっ』
トール『仕方ねぇ…、てめーがスルーズの婿にふさわしいかテストするぜ!』
アルヴィース『テスト??』
アルヴィース(…まさか巨人キラー・トールと殴り合い!?ガクブル)
アルヴィースは雷神の鉄拳制裁を想像して震えました。
しかし…
トール『おう。知能テストに合格したら、結婚を許してやんよ』
アルヴィース『ち、知能テストォオ?お義父さん、脳筋で有名だけど大丈夫?』
トール『うっせ!俺より知能低い様な男に娘はやれねー!』
なんとトールは自慢の腕っぷし勝負ではなく、頭脳勝負に出ました。
トールは知識の神オーディンの息子ですが、直情径行・単細胞・口より手が出る脳筋タイプの神。
どう考えても知能対決は不利です。
なぜこんなテストに最後の望みを託してしまったのでしょうか?
アルヴィース『よーし、オイラ頑張るよ!』
アルヴィース(ウケケ、脳筋トールと知能勝負なんか軽い軽い♪)
キモオタ黒妖精はイージーゲームと踏んで、申し出に受けて立ちました。
さぁ、スルーズを賭けた花婿試験の開始です。
トール『第一問、「地面」のことを各国語で答えなさい』
アルヴィース『人間語:大地、アース語:野原、ヴァン語:道、巨人語:常緑の物、妖精語:芽生える物』
トール『せ、正解…(カンペを見ながら』
アルヴィース(簡単過ぎwwやっぱコイツ脳筋だねwwww)
英検にしたら5級相当の設問じゃない…?
それにしても、人間・アース神・ヴァン神・巨人・妖精はそれぞれ言語が異なるんですね。
まぁ、方言Lvの違いかも知れないけど(・ω・)
トール『つ、次いくぞ!第二問!!』
アルヴィース『頑張って下さい、お義父さんwwww』
似た様な設問がずっと続くので、表形式にて省略させて頂きます(゚Д゚)
【花婿試験・設問集】
人間 | アース | ヴァン | 巨人 | 妖精 | 小人 | ニブル | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
空 | 天 | 高み | 風の織り手 | 高い故郷 | 綺麗な屋根 | 滴る館 | – |
月 | 月 | 偽りの太陽 | – | 素早い旅人 | 時を告げる者 | 仄かに輝く者 | 旋回する輪 |
太陽 | 太陽 | 天体 | – | 絶えぬ輝き | 綺麗な輪 | ドヴァリンの喜び | – |
雲 | 雲 | 驟雨の見込み | 風のたこ | 雨の望み | 天候の勢力 | – | 秘密の兜 |
風 | 風 | 翻る者 | – | 嘆き悲しむ者 | うなる旅人 | – | 吹き荒ぶ突風 |
静けさ | 平穏 | 静寂 | 風の静けさ | 蒸し暑さ | 日の途切れ | 日の隠れ場 | – |
海 | 海 | 滑らかに横たわる者 | 波浪 | ウナギの故郷 | 飲み物 | 深み | – |
火 | 火 | 炎 | 波動 | 飢えた噛む者 | – | 焼く者 | 慌しい者 |
森 | 森 | 野原のたてがみ | 魔法の杖 | 燃料 | 綺麗な枝の者 | – | 丘の海草 |
夜 | 夜 | 暗闇 | – | 光を欠く者 | 眠りを慰める者 | 夢の織り手 | – |
麦 | 大麦 | 穀物 | 生長 | 食い物 | 酒の引き割り麦 | – | すんなりした茎 |
麦酒 | エール | ビール | 泡立つ物 | がぶ飲みする物 | – | – | 蜜酒 |
以上、出題は全13問。
黒妖精アルヴィースの解答は…
トール『うう、13問目も正解…(カンペを見ながら』
アルヴィース『楽勝wwwwwwwwwwwwwww』
堂々の100点満点でした!!
さすがに英検5級のテストで誤答は無いよな…。
トール『うへぇ。物知り博士かよ、おい。。。』
アルヴィース『でしょ?オイラ、頭良いっしょ?www』
試験を無事パスできたアルヴィースは、遂にトールを得心させた!と安心しました。
これで花嫁スルーズは自分の物だと。
…しかし浮かれる黒妖精にトールはこう言ったのです。
トール『だが、どうやらてめーは俺より低知能みてーだな。やっぱ娘はやらん!』
アルヴィース『ハァ?オイラはちゃんと正解を…』
トール『今、何時だと思ってんだ?』
アルヴィース『ハッ!!?』
トールが帰宅した時、太陽は地平線の向こうに隠れていて、まだ辺りは暗かったのです。
そして花婿試験を出題している間に、時刻は日の出を迎えていました。
これが何を意味するのか?
暗くて寒くて湿気ジメジメな洞窟で暮らす黒妖精が弱点とする物、それは太陽の光!
熱く明るく輝くお天道様の下では生きてゆけないアレルギー体質なのです。
アルヴィースは慌てて隠れようとしましたが、もう間に合いません。
トール邸に燦燦と陽光が降り注いできます。
まともに太陽光を浴びた黒妖精の肉体は、みるみるうちに石化していきました。
そう、トールはアルヴィースの語学力なんてどうでも良かったのです。
黒妖精が生命活動を維持できなくなる日の出まで時間稼ぎするために、花婿試験を提案したのでした。
アルヴィース『ウワアアアアン、なんでオイラが…こんな脳筋に……』
トール『てめーの敗因は…たった一つだぜ…アルヴィース。たった一つの単純な答えだ………』
トール出題の花婿知能テスト、最後の解答は実に明快!
トール『てめーは俺を怒らせた!!(ドーン』
怒った雷神トールを前にして、生きて帰れる者など存在し得ないのです。
きっとアルヴィースは『神々と契約したのに><;』と嘆いたでしょうが、彼は完全に石と化したので、もはや異議を唱えることはできませんでした。
アルヴィースは二度と元の姿へは戻れなかった…。
鉱物と生物の中間の生命体となり、永遠にトール邸の庭先に立ち続けるのだ。
そして死にたいと思っても死ねないので…そのうちアルヴィースは、考えるのを止めた。
こうして良きパパ・トールは娘スルーズをキモオタの手から守ったのでした。
めでたしめでたし。
【追記】
原典版・トールの花婿試験解答にはいくつか謎があります。
まずヴァン神・妖精・小人・ニブル語で該当単語を答えていない箇所があります(設問表の『 – 』部分)
さらに…
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『神々は<ひるがえるもの>と言い、最も神聖な神々は<いななくもの>と呼ぶ』
『巨人は<がぶ飲みするくもりのない酒>と名付けている。(中略)スッツングの息子達は<宴会の生の酒>と呼ぶ』
『北欧神話物語』K・クロスリイ-ホランド 青土社(1983)より引用
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↑この様に神々・巨人族について複数表記している箇所がいくつもあります。
(※スッツングは第1話登場の巨人)
この試験解答の謎は参考文献を読んでも理解できなかったので、単純化した表でまとめました(・ω・)
俺の知識では問答の内容解説はムリなんで、単語の羅列に留めておきます…スイマセン!
物語本筋に関する解説を書いたら長くなっちゃったので『2話完結の予定(゚Д゚)』って言ったけど、『解説編』をオマケにつけます。
まぁ、読まなくても大丈夫な回っす…。
脳筋トール中々考えたな…理由がアホだがww
トールが頭を使ったのはこの神話だけだと思う。
無い知恵を振り絞るくらい、娘が大事だったのねん(・ω・)v
アルヴィース・・・なんというカーズwww
トールちゃんも結構頭まわるのね・w・
キモオタだったから必死だったのでせうかw
1.太陽に弱い→第1部吸血鬼
2.石化→第2部カーズ
このどっちにしようか最後まで悩んだ。
神話本筋と関係ないとこに時間をかけるのがデフォ。
>キモオタだったから必死だったのでせうかw
アルヴィース氏がよっっぽどキモかったんだよ…。