第20楽節『軍神ヴィダル・2』

投槍北欧神話・20楽節『軍神ヴィダル・1』の続きです(*’ヮ’)


グリッドとラブラブに
今は昔。
アースガルド主神オーディンは、ナンパの末に巨人戦士のグリッドと恋人になりました。
グリッドの家は巨人国の洞窟です。
つまり神様にとっては敵地。
ソロで行ったら死ぬ可能性だって大きいのですが、オーディンは危険も省みずグリッドの元に通います。
彼は巨人に変身できる(第1話参照)から平気だったんかな(・ω・)
二人は大人の意味で愛を育みまくり、当然の帰結として…

グリッド『オーディン、私…赤ちゃんができたみたい(*ノωノ)』
オーディン『おお、でかしたぞ!私とお前の子なら、さぞかし強い軍神が生まれるだろう』
グリッド『期待するのは強さだけ~?( ノω・)チラッ』
オーディン『おっと、失礼した。お前に似て美しい子だろうな!』
グリッド『あ~ん、オーディンだ
オーディン『私もお前を一番愛しているぞ!』

こんな会話があったかどーかは存じませんが、めでたくグリッドはオーディンの子を懐妊したのです。
十月十日が経ち(神様や巨人の妊娠期間って人間と同じなんだろうか??)、彼女は洞窟の中で元気な男の赤ちゃんを産み落としました。

軍神ヴィダル
その赤子がヴィダルです。

彼は軍神オーディンと戦士グリッドの血を分けただけあって、確かに強く逞しい子でした。
ラグナロクの激しい戦火を生き残る程に。
見た目については特に記述が無いので不明っす。

やがてヴィダルが成長すると、グリッドは父オーディンの下で就職させようと思いました。
敵国アースガルド王の落胤をいつまでも巨人国に置いていたら、命に係わるものね(´・ω・`)

上京しろと言われるヴィダル
グリッド『お前は最高神オーディンの血を引いているんだから、巨人国を離れてアースガルドで暮らしなさい』
ヴィダル『……(コクリ』
グリッド『このブーツを履いて、父の敵をボコボコにしてやんのよ!』
ヴィダル『……(コクリ』

ヴィダルは黙って母の言葉に頷き、はるばるアースガルドへ上京することになりました。

ヴィダルのブーツ
この時、餞別に渡された靴がROにも登場するヴィダルのブーツ。

ヴィダルのブーツは変人ママ・グリッドが贈っただけあって、由来が風変わり。
人間達が神様に供物として捧げた、革で靴を作る際に切り落とす『爪先と踵の部分のハギレ』をパッチワークだか張子の要領で繋ぎ合わせて作成したブーツなんだって。
リサイクル品…?
黄金の甲冑を身に着けるオーディンと比べたら、随分みすぼらしい見た目だったことでしょう。

しかしながら無数の革をなめし、重ねて作り上げたこの靴は鋼鉄を凌ぐ強度を誇る逸品でした。
質素な洞窟で暮らすグリッドは華やかな見た目より、性能重視の堅実志向だったのね。
『オーディンの息子ヴィダルが、フェンリルを殺す時に履いていたブーツ』とアイテム解説文にある通り、世界の終わりで大怪獣フェンリル狼(第14話参照)に飲み込まれた父の仇を討つのはこのヴィダル少年。
この靴を履いた足でフェンリルの顎を踏みつけ、狼の口を裂いてブッ殺すのです。
神話中では『最高神を殺害した狼…を殺すのに使った』最強の靴なんですね(・ω・)

北欧神話では多くの登場人物が予言・予知の言葉を語り、それに従って生きています。
きっとグリッドは自分の恋人オーディンがいずれ非業の最期を遂げることを、ヴィダルが世界の命運を賭した戦渦に巻き込まれることを知っていたんでしょう。
だからこそ、ヴィダルに唯一無二の最強装備を託したのです。

オーディンを見送るグリッド
いつか帰って来なくなる恋人を愛する気持ちってどんなものでしょうか。

旅立つヴィダル
アースガルドへ旅立ってゆく一人息子を見送る思いってどんなものでしょうか。
いつの世も待つ身の女性の姿は、胸に迫るものがあります。
神様も巨人も人間も変わらないね。
さて、神々の黄昏はまだ先の事件なので、上京したヴィダルの暮らしぶりを御紹介しましょう。

ヴィダルお披露目
オーディン『今月からアース神軍で働くことになった私の息子ヴィダルだ(キリッ』
ヴィダル『……(ペコリ』
神々(ま、また私生児がデキたんですか、オーディン様…(;´Д`))

ヴィダルは『森』という意味の名前です。
アースガルドで軍神の座に就いた彼は、その名に相応しくヴィディ(若草と若木の生い茂る国)という領地が与えられました。
そしてヴィディの地に城や屋敷を建造……せず、森の中に野宿して暮らしたそうです。
妾腹の生まれでも王子様には違いないのに、何故ホームレス…?

他の神々は全員自分の城を持っています。
 オーディン;ヴァラスキャルヴ城、ヴァルハラ城
 トール:ビルスキールニル城
 フレイヤ:セスルムニル城
 バルドゥル:ブレイザブリク城
(※ロキは住居が謎ですが、少なくとも野宿ではない)

みんな金や銀で作られた立派なお屋敷です。
最高神の息子なんだから金が無かったんじゃなく、趣味でそういう野宿生活を好んだのだと思います。
これは飾らない性格で粗末な洞窟に暮らしていた母グリッドに似てますね。

母譲りで変わり者だったヴィダル。
最も特徴的なのは全神話を通して、ただの一回も言葉を発しない神だということです。
だから台詞が全部『……』なのだ(*’ヮ’)
おかげでついたアダ名が『沈黙の神』です。
雄弁を司る父オーディンは話がクソ長い神なのに正反対。

飲み会に誘われるヴィダル
トール『来週、飲み会やるけど来るか?』←No.1大酒飲みの神
ヴィダル『……(コクリ』
トール『じゃあ、カウントしとくぜ♪』

話しかけてもウンともスンとも言わないヴィダル君。
それでも神々の飲み会には律儀に出席してたり(↑のやり取りは創作だけど)、父オーディンの命令にはしっかり従うので人当たりは悪くなかったよーです。
また彼は、ロキが神々に罵詈雑言を並べ立てる『ロキの口論』の章で、粗相を暴露されない数少ない神の一人でもあります。
無口な変人でも仕事は従順にこなし、素行に問題無い(女遊びとかしない)良い子だったんじゃないかな。
オーディンからこんな息子が生まれるなんて奇跡ですね(*’ヮ’)

森の中のヴィダル
ヴィダル(御殿より森の方が、母さんと暮らした頃を思い出して落ち着くや…)

ヴィダル神は富や権力から距離を置き、深い森の中で静かに暮らします。
強大な敵フェンリルを打ち倒す力を蓄えながら…。

ヴィダルが活躍するシーンは最後の最後なので、今回はこんなところで(*’ヮ’)
次回は長めのお笑い珍道中を書こうと思います。

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