第1楽節『ブラギの詩・2』

詩の蜜酒
投槍北欧神話・第1楽節『ブラギの詩・1』

詩の蜜酒を巡る、神・小人・巨人の物語の続き。

 


暗礁に置かれた小人兄弟
今は昔。
DQN小人兄弟フィアラル&ガラールは賢者クヴァシルを殺害。
彼の血液を使って『詩の蜜酒』という知能ドーピングアイテムをこしらえました。
やりたい放題の小人達は罪の無い巨人ギリング夫妻まで手にかけますが、被害者遺族スッツングの逆襲に遭います。
殺人の慰謝料として蜜酒はスッツングに支払われたのでした…。

詩の蜜酒ゲットだぜ!
詩の蜜酒が入った壷ソン&ボドン、桶オードレリルを携えて巨人国に帰還したスッツング。
彼は領地フニット山の地下深くに洞窟を掘りました。
その中に専用の酒蔵を建造し、魔法の酒を厳重に保管したのです。

しかし、このスッツングは神々の知識を手にした割に馬鹿だったので…

スッツング『俺すごい酒を持ってるんだぜwwwクヴァシルの血が入った名酒wwwプレミア物www』
巨人達『スッゲー(・∀・(・∀・(・∀・*)』
スッツング『えっへん!』

…とあっちこっちで吹聴して回りました。
彼の自慢話は巡り巡ってアースガルドまで伝わることに…。

~神々の溜まり場・グラストヘイム~
グラストヘイムに噂が届いた
神A『大変です。賢者クヴァシルが殺されて酒にされたそうです(;´Д`)』
神B『知識で窒息死って、やっぱ嘘だったんだ…』
神C『やばいですよ、彼はアース&ヴァン神族同盟の証なのに』
神D『このままでは同盟崩壊の危機が!』

会議の結果、神々は詩の蜜酒奪取を決定しました。
その任務遂行に立ち上がったのは…

最高神オーディン
オーディン『こうしてはおれん。私が取り返してこよう!』

戦争・勝利・知識を司る、アースガルドの主神オーディン様!
オーディンは知識獲得のために過激な修行を繰り返しているINTマニア。
INTドーピングアイテムと聞いては黙っていられないでしょうし、そもそも賢者クヴァシルは彼にとって親密な部下だったんじゃないかと予想しています。
(クヴァシルは別件で超重要任務に就いてるし)

さて。
ここで神と巨人の関係について簡単に説明しましょう。
神々の中には巨人族と結婚したり、家系図を紐解くと巨人の血を引く者もいますが、基本的に敵対関係。
最終戦争ラグナロクの時まで、神と巨人は戦い続けています。

つまり…

オーディン『スッツングくーん、その蜜酒ちょーだーい(*^▽^)』と頼んで、すんなり渡してくれる訳がありません。
むしろ『にっくきオーディン!殺してくれるわーー!(゚Д゚#)』と返り討ちに遭ってしまうでしょう。
”計略”を持って臨む必要があるのです。
勝利を司る勇猛な戦神にして賢神であるオーディンは、如何にしてクヴァシルの血を取り戻すのか…?

まずオーディンは…

巨人に変身したオーディン
オーディン『ルーンコズミックパワー・メイクアップ★ミ』

魔法の力で巨人に変身しました。
彼は変身術を得意とし、『顔を変える者(イヤールク』という別名もお持ちです。

余談。
オーディンの髪型グラフィックは格好良いやつを選んだつもりだけど、オーディンマスク(※ROのアイテム)を装備させると頭部がよく見えないんだよね…。
巨人化した事だし、せっかくだから拡大しておいたよ。是非、凝視して下さい。
なお右目の黒い●はROアイテムの眼帯でござる。ROユーザじゃないと分かんないよね…。
巨人のサイズ感については…ンー、また今度書きます。多分。

本筋に戻りましょう。

旅立つオーディン
オーディンは部下を伴わず、ソロでアースガルドから出立しました。

巨人に変身…という事は正面からのカチコミではなく、潜入工作による奪還作戦となります。
神の王にも関わらず、単独で危険な敵地に乗り込む所はカッコイイですね。
惚れてもええんやで?

働く農夫達+オーディン
農夫達『明けても暮れても~働き詰め~自由はいずこへ~(´ω`;(´ω`;(´ω`;)』

原野を歩き続けたオーディンが辿り着いたのは、詩の蜜酒が眠るスッツング領フニット山……から程近い谷間。
そこでは9人の農夫が牧草を刈り取っているところでした。
バランの様な物は牧草なんだよ。心の目で見てね。

9人とかさー、チョイ役のくせに大所帯なんだよ。挿絵が面倒い(‘A`)
昔のゲルマン民族にとって9は大事な数字だったんだそーです。
くそっ、何で1とか2をラッキーナンバーにしてくれなかったんだ。

さて。
農夫達の動きは、非常にノロノロしていて作業が全く捗っていません。
草を薙ごうにも、手にした鎌はめっちゃ刃こぼれしていて、切れ味が超~鈍っていたのです。
その姿を認めると、オーディンは足を止めて話しかけました。

オーディン『精が出ますね。こちらはどなたの農場ですかな?』
農夫A『バウギ様だよ~』
農夫B『詩の蜜酒で超有名なスッツング様の弟君さ!』

おっ、話がちょっと見えてきたぞ。
任務にかこつけた寄り道ではなく、ちゃんとした作戦の様です。

農夫C『お前さん、見ない顔だね?(´ω`)』
オーディン『私はボルヴェルク。旅の者です』
農夫D『そかそか。ゆっくりしてけ~(^∀^)』
農夫E『俺ら仕事があるから、何のお構いもできねーけどなw』

最高神は正体を隠し偽名を名乗りましたが、面倒くせーんで台詞表記オーディンのままでいきます。
あと旧1話でボルヴェルって誤記してました。スイマセン、スイマセン…。゜:(つд⊂):゜。
間違いが多くて本当に申し訳ございません。
謝罪はさておき。
汗を拭き拭き、鎌を振り続ける男達に向かって、ボルヴェルクことオーディンは微笑みました。

オーディン『ところで…随分と年季の入ったお道具ですな』
農夫F『そーなんだよー。もー切れ味ゼロ』
農夫G『ウチの旦那様ケチだから、新しい鎌を卸してくんなくってさー(`ω´;)』
農夫H『みんな騙し騙し使ってるよ。。。』
農夫I『まだまだノルマ残ってんのに(‘A`)』
オーディン『それはお困りでしょう』

ボルヴェルクの砥石
オーディン『よろしければ私が刃を研ぎ直して差し上げますよ^^』

オーディンは腰帯に差していた砥石を取り出しました。
ベルトに差せる…とゆー事はグリップとか付いてそうだけど、もーコレで許して下さい。
ROに砥石システムは無いから適切なグラがない…

オーディン『私の砥石で磨けば、どんな”なまくら”でも新品以上の切れ味が蘇る事、間違いなし!』
農夫A『え~、本当かい?』
農夫B『でも…お高いんでしょう?』
オーディン『何の。研磨サービスは無料です^^』
農夫C『んだらば、俺やってもらおうかな(・∀・)』

オーディンは一人から草刈り鎌を預かると、砥石で表面を手際良く撫で始めます。
彼の手が数往復すると、刃は完全に整えられ、見事な輝きを放ちました。

オーディン『さぁ、生まれ変わった鎌をお試し下さい^^』
農夫C『うわぁい、スッパスパ切れる!!斬鉄鎌や!!』
農夫D『まじかよ!!』

ピカピカの鎌は本当に切れ味抜群。
力を込めなくても、軽く左右に振るだけで、簡単に牧草を刈り取ってくれました。
これなら辛い農作業も捗りまくりんぐ!
農夫のにーちゃんは感激です。
うーん。軍神の王らしくオーディンは、刃物のメンテナンスアイテムも高グレード品をお持ちだったんですね。
自ら手入れを申し出るだけはあります。

農夫A『お、俺のも研いでくれる?』
農夫B『俺の鎌もやってよ!』
農夫D『こっちも頼んます><;』
オーディン『ええ。喜んで^^』

スーパー砥石の威力を目の当たりにして、他の農夫達もオーディンを取り囲んで研磨を依頼しました。
最高神は気前良く応じ、何の見返りもなく全員の道具を手入れしてやったのです。
恩を売ってスッツング一味に取り入る寸法でしょうか。
いやいや…。

農夫E『あんた、しばらくこの土地にいるのけ?』
オーディン『拙者は流浪人。また流れるでござるよ』
農夫F『そっかぁ、残念だなぁ。。。』

彼らは広大な農場に生い茂る牧草を見渡し、溜息をつきました。
全て収穫するには毎日9人で働いても、ひと夏がかりでしょう。
きっと刈り終える前に、また鎌の刃は鋭さを失うに違いありません。
このスーパー砥石があれば仕事の効率は段違いになるのに、ボルヴェルクはすぐ去ってしまうなんて…。
農夫はダメ元で尋ねてみました。

農夫G『ねぇねぇ、あんたの砥石を売ってくれない??』
オーディン『お譲りする事にやぶさかではありませんよ』
農夫H『おお~、それがあったら百人力だよ~(*´∀`*)』
オーディン『やぶさかではありませんが…しかし…うーん…むむむ…』
農夫I『な、何だよぅ?(´ω`;)』

ボルヴェルク★ショッピング
オーディン『この砥石は残り一つしか在庫がございません。よって、お一人様にしかお売りできませんねぇ』
農夫A『エーッ!?』

なお、オーディンは行商人に扮してた訳じゃないんですが、原典を読んで『これって北欧神話におけるダイヤモンドシャープナー的な物だよな…』とゆー印象が濃かったため、ショッピング番組ぽい挿絵になりました。

農夫B『お、オラは5M出すよ!』
農夫C『6M!』
農夫D『8Mでどう?』
農夫E『最高額の1.5倍~~!(`Д´)』
農夫F『しゃらくせー、あんたの言い値で買うっ!(`ω´;)』
農夫G『じゃあ、俺も!いくらでも言い値を出す!!』
オーディン『おやおや。皆さん、お目が高い』

農家垂涎のレアアイテムを何としても手にするべく、彼らは対価を競い合い、遂には全員が『言い値で買おう!』状態に。

農夫達『絶対に絶対に俺がゲットするんだ~~~!!ヽ(`Д´#)ノ』
オーディン『ふーむ。これでは差がつきませんな』

ちょっと考える素振りをして、オーディンは提案しました。

ぽーい
オーディン『では、こうしましょう。先着一名様にお売り致します。さぁ、どうぞ!!』
農夫達『Σああああああっ!?』

言うが早いか、彼は空に向かって砥石を放り投げました!

オーディン『ほらほら、早い者勝ちですよ!』
農夫A『あれは俺のモンだー!』
農夫B『オラが買うんだってば!』
農夫C『どけーっ!』
農夫D『お前らには渡さないぞー!(`Д´;)』

慌てた農夫達は我先にと鎌を振り回しながら、押し合いへし合い殺到したものですから…

血の海
研ぎたての刃でお互いの喉を斬り合って、瞬く間に9人全員が地面に転がってしまいました。
もちろん死体として…。

喉を掻っ切って死ぬという事は頸動脈を切断したと思われるので、辺り一帯はおびただしい血で溢れかえっていたでしょう。

オーディン『フフ…毎度どうも』

オーディンは巧みな話術だけで、労せず敵方の使用人を全滅させたのです。
そして不敵な笑みを浮かべながら、争いの火種である砥石を拾い上げたのでした。

彼の名乗った”ボルヴェルク”とは、すなわち『悪事を成す者』の意。
人心を誘惑し、闘争心を煽り、血の海に君臨する殺戮の神。
それが軍神オーディンの恐るべき本質と言えるでしょう。

最高神は何で大量殺人したのか?
答えは次回、第1楽節『ブラギの詩・3』に続く。

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