第44楽節『神々の酒宴・2』

遂にあの神様が立ち上がる…!

第44楽節『神々の酒宴・1』 の続き(・ω・)


今は昔。
神々が酒盛りしまくった結果、アースガルド王宮は深刻な酒不足に陥りました。
お酒大好きな神様が健康的に禁酒するはずもなく…、アルコール生産性向上プロジェクトが発動。
酒豪の雷神トールがプロジェクト責任者に任命されたのでした。


トール『うおおおお、酒!酒ーー!!』

プロジェクトリーダー神トールは、同じく運命女神にラッキーゴッドと名指しされたエーギルさんの家へと直行しました。
向かうは人間界の海に浮かぶフレスエイ島です。


エーギル『わーれはうーみのこ、しーらなーみーのー♪』
ラーン『さーわぐ、いーそべーのまつばーらーにー♪』

海の災いを司るエーギル&ラーン夫妻は自宅でのんびりしていました。
原作でこの夫妻の人柄ってあんま見えてこないんだけど、二人三脚のお仕事してるし、波の乙女とゆー娘を9人ももうけてるし、仲は良かったんじゃないかなー?と思ってます(・ω・)
そんな夫婦の憩いのひとときに…

ズドドドドド!

エーギル&ラーン『!?』

爆音をたてながら山羊戦車のトールが唐突に現れたのです。
すわ一大事か、合戦かと夫妻は思ったに違いありません。
しかし雷神はでっかい声でこう叫びました。

トール『おーい、エーギル!アースガルドの酒蔵がピンチだから、たんまりビール造ってくれ!』
エーギル『……はぁ……??』

エーギルさんの家業は船乗りを荒海に引き込んで殺す、言わば海の冥王。
お酒製造スキルとは無縁です。
溺死者から巻き上げた黄金はあれど、神々に献上する酒はありません。
そして元は巨人族であり、穏やかとは言い難い気性でしたので、トールの不躾な言い様に反感を持ちました。


エーギル(アポ無しで他人ん家に上がりこんだ挙句、ビール造れだぁ?!
得意技:荒波で船を沈める…な海神のドコを見て、ビール造りに最適★ミって判断したんだよ。
意味ワカンネーよ、この脳筋雷神め!
大体、俺が忠誠を誓ったのはオーディン様であって、息子のテメェじゃねンだよ。
しれっとタメグチ利いてんじゃねーぞ、クソぼっこがああああああ!)

……あくまでも俺の想像デス(*’ヮ’)

ラーン(アンタ、角たてない様に断るんだよ)
エーギル(分かってるわい!)

怒髪天をつく勢いのエーギルではあったものの、彼はロキと同じく巨人族からアースガルドに寝返った男。
世渡りの術には長けていました(※投槍解釈)
考えの浅いトールを丸め込むべく、本音を隠してこの様に返答したのです。


エーギル『トール様。酒宴に供するビール製造の大役を仰せつかり、このエーギル、身に余る光栄でございます』
ラーン『……』
トール『おっ、やってくれんのか。サンキュな♪』

エーギルの言葉を疑わぬトールは笑顔になりました。
ところがです…


エーギル『ですが非っ常~~に残念な事に、当家ではその様な大量のビール醸造できる鍋を持ち合わせておりません』
トール『えっ。な、なべ?』
エーギル『何せアース神は皆様、酒客揃いでいらっしゃる。並の量では追いつきますまい』
トール『そっか、でけー入れモンが要るよなぁ~』
エーギル『ああ~残念だ~~!特大の鍋さえあれば!皆様全員に振る舞えるだけの酒が造れるのに、残念でならない~~!』
トール『うーん。一旦、戻って誰か鍋持ってねーか聞いて来るわ』
エーギル『はい!お待ちしております^^』

トールは再び山羊戦車を駆り、来た道を爆走してゆきます。
それを見てエーギルは安堵しました。
彼は知っていたのです。
アースガルドには、そんな巨大な鍋なんか存在しないという事を。
そして工業力に欠けるアース神達には、巨大な鍋を製造すること自体ができないという事も。
つまりトールは体裁良くエーギルに断られてしまった訳です。


エーギル『ももひろ、ちーひろのうーみのそこー♪』
ラーン『あーそびなーれたる、にわひーろしー♪』

雷神の姿が見えなくなると、海神達は再び戯れに興じました。

一方。
エーギルの思惑など露ほども気づかないトール。
彼はアースガルドに戻るや否や、神々に問いかけました。


~アルコール生産性向上プロジェクト・ミーティング~

トール『でかい鍋を持ってる奴いるか?』
神々『しーーーん…』

誰一人として声をあげません。
エーギルの読み通り、やっぱ誰も持っていなかったのです。

トール『いねーのかよ!小人に外注するっきゃねーのかな。。。』
フレイ『ドケチのオーディン様が予算つけて下さるとは思えません(;´-ω-)』
戦乙女A『主神様はビールを嗜まれませんしね』
トール『それもそうだよな。。。どーすっかな。。。』

会議が暗礁に乗り上げたかと思われた、その時。
挙手する一人の神がありました。
それは…


かつてフェンリル狼に片腕を喰いちぎられた軍神チュールです。
第14話参照)

チュール『私自身の手元にはありません…が、実家の父が巨大な醸造鍋を持ってます』
トール『巨大って、どんぐらいのだ?』
チュール『ざっと深さ8kmはあるかな』
神々『8kmーーー!?Σ(゚Д゚(゚Д゚(゚Д゚)』
チュール『自動でグルグル攪拌してくれる便利機能付きの優れモノですb』
トール『すげーな、それならいくらでも酒が作れるじゃねーか!さっそく親父さんから譲って貰おうぜ!』
神々『しーーーん…』

喜びに湧くプロジェクトリーダー神とは打って変わって、列席者達は顔色が悪くなりました。

トール『な、何だよ。お前ら、急に黙っちまって…』
チュール『トールよ。私の実家がどこにあるか、お忘れですか?』
トール『Σハッ…!』

深さ8kmという尋常でないサイズの鍋を所有するという、チュール実家…。
サイズの単位を聞いただけで、ピン!と来た方も多いでしょう。
そう。
チュールの生家はアースガルドの仇敵である巨人国。
前回登場したエーギルと同じく、チュールもまた一族を裏切ってオーディンの軍門に下った巨人でした。
醸造鍋の譲渡とは、すなわち敵地への侵入を意味する訳ですね。

チュール『父から鍋を譲って貰うことはできるよ。しかし裏ワザが必要でしょうね』
トール『一筋縄じゃいかねぇよな』
チュール『どうするんだい?止めておく??』
トール『もちろん行くに決まってるぜ!何てったって、酒がかかってんだからな!』
チュール『ふふ…、そう来なくてはね!^^』

こうして。


勇敢で名高い軍神チュールが、プロジェクトリーダー補佐と決まりました。
トールって本当に色々な人物からサポートを受けてるなぁ。
人徳っすよね。

そして善は急げとばかりに、トール&チュールは巨人国へと出立します。
危険な巨人国へ…。

さーて。
チュールの実家には一体どんな家族が待ち受けているのでしょうか。
そもそもチュールは何で家出しちゃったの?
チュールパパはお鍋をくれるのかな??
その答えは第44楽節『神々の酒宴・3』を待て!(*’ヮ’)

 
【お断り】
このお話にはヴァージョン違いのシナリオがあります。
また、偉い先生の解釈によっては『トールに随伴するのはチュールではなく別の神様』…という説もあるよーです。
色々と比較検討した結果、投槍北欧神話ではチュールにしときました。
詳しい事はそのうち書きます(・ω・)ノ

もしくはちゃんとした本を読んで下さい。

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