第22楽節『人間誕生』

相変わらずの不定期更新です、こんばんは(*’ヮ’)
今回は人間誕生にまつわるエピソード。
(但し、人間そのものはメインの話じゃないです)


ユミル討伐
今は昔。
世界が原初であった頃。
オーディン・ヴィリ・ヴェー三兄弟は巨人王ユミルを殺害の後、99.99%の巨人族を駆逐して大地の覇者となりました(第18話

漂流するベルゲルミル夫妻
たった二人生き残った巨人族ベルゲルミル&妻は、巨大なユミルから流れ出した血の海を漂流して、下層世界に逃げ延びたのでした。
ちょっとここで北欧神話の世界構造を投槍に書いとこう(・ω・)

ユグドラシルと世界
ウワァ、テキトー過ぎる図。

この世界はビッグサイズのトネリコの樹『ユグドラシル』に内包されています。
ユグドラシルの三本の根っこに、三つの大地が存在してるのです。

神話の最初期、巨人族は第一層に暮らしていましたが、オーディン一族に敗北し、第二層に移住。
オーディンは巨人から分捕った第一層にアース神族の国『アースガルド』を、ベルゲルミルは第二層に巨人国『ヨーツンヘイム』をそれぞれ建国しました。
一旦は残存数2人となった巨人族ですが、下層世界でモリモリと増え、神々を脅かす存在となってゆきます。

オーディン、千里眼中
オーディン『巨人どもめ、まだ生き残りがいたか…。これは第二層に派兵せねば!』

巨人勢力が復活しつつあると察知したオーディンと弟2人は、第二層の大地に『神様軍の拠点』を造ろうと決めたのです。
拠点作成材料は、自分達がブッ殺した巨人王ユミルの死体。
ユミルの巨大な肉体を腑分けし、肉を肥沃な土に、血を深い海に、頭蓋骨を広大な空に、脳ミソを漂う雲に、背骨を連なる山脈に変えて、一つの新たな国としました。
リアルに想像すると大変グロい、この国は『ミッドガルド』と名付けられました。
ROの重要ワードに『ユミルの心臓』がありますけど、神話では心臓について特に言及はないです(゚Д゚)
原作者ミョンジン先生やグラビティ社の創作だと思われます。

拠点の属国が完成しましたが、それだけでは用を足せません。兵隊が必要。
オーディン様は浜辺で拾った二本の流木をベースに、自分達の姿に似た下位生命体を創り、ミッドガルドを治めさせようと思いつきました。
神様パワーで木切れにオーディンが魂を、ヴィリが知性を、ヴェーが五感を与え…

人間誕生
最初の人間アスク(男)&エムブラ(女)が誕生!

この二人が北欧神話版アダムとイヴ。
アスクは『トネリコ』、エムブラは『ニレ』という意味です(・ω・)
世界の基盤はユグドラシルという巨大樹、人間の原材料が流木…古代北欧人は樹木への畏敬の念が強かったんですね。
神話舞台の北欧諸国は豊かな森林資源に恵まれ、現代でもその恩恵を受けています。
神話に登場する種族中、人間は神の眷属であり、『巨人に対抗する戦力』として生を受けました。
オーディンを始めとした北欧神は全能の存在ではありませんが、人間界&人間に限って言えば創造主であり、彼らの運命をほぼ掌握しています。

第10話では、オーディンが発した鶴の一声でゲイルロド王が即死する程度に。
まぁ、『人間界=第二層における神様軍の砦』ってのは、投槍解釈だけどね(ノ∀`)
そう思うに至った経緯なんかもいずれ書けたらいいなぁ。。。

さーて、今回の本題はここからだ!!(゚Д゚)
↑のお話は『スノリのエッダ』で語られている人間創造譚。
13世紀にスノリ=ストゥルルソン先生が編纂したエッダはとってもメジャーな文献で、Ragnarok Onlineの神話エピソードもここから引用されています。
しかし『スノリのエッダ』とは別の時代・土地で編纂された神話では、登場する神様の名前や設定が色々違っていたりするのです。

今回テーマの人間誕生話は『巫女の予言』という別バージョンの神話において、非常に興味深い差異が見られるので御紹介。
『神様が木材を使って人間を創った』という筋は同じですが、創造主メンバーが入れ替わっています。
参考文献によると…

オーディンが魂を、ヘーニルが知性を、ローズルが五感を与え、流木が2人の人間となった。
とあります。
オーディンの実弟ヴィリ&ヴェーじゃなく、ヘーニルとローズルが創造チームに!
……。
ローズルって誰だし…(゚Д゚;)
資料を漁った結果、偉い学者の先生が『ローズルとはロキの古い名だと考えられる』と本に書いてました。
つまり『巫女の予言』の人間創造は…

人間を創造するオーディン・ヘーニル・ロキ
↑こうなる訳です。

何ということでしょう。
第2話第21話で特に目的も無く人間界で遊んでいただけのグダグダ神様トリオが人間創造という偉業を成し遂げていたなんて…。
…おかしい…、絶対この話はおかしい…。
この三人がクリエイティヴな仕事をするなんて、イメージと違くね??

致命的な欠点として挙げたいのは『ヘーニルが知性を与えた』という箇所です。
知識の神オーディンが知性担当なら話は分かる。
でもヘーニルだよ!?
ヘーニルって第5話で性格がテキトー過ぎてリストラの挙句、母国に強制送還された神じゃん。
オーディンの他にも賢そうな神様が沢山いるのに、何故コイツなんだ!!
雷神トールと同じ位、ヘーニルさんからはインテリジェンスを感じ取れません。
仮にも人間族の一員である俺としては『自分の脳ミソはヘーニルに授けられた』という点を絶対に認めたくないため、投槍北欧神話では『人間創造チーム=オーディン・ヴィリ・ヴェー三兄弟』説を推すのでありました。

ただ『巫女の予言』の人間創造譚は面白いエッセンスを含んでいます。
重要なのは実際に人間製作に加わったかどうか?ではなく、神話内の時系列において『人間界創造』という最初期からオーディン・ロキ・ヘーニルはチームを組んでいたって箇所。
アース神族はイドゥンの林檎(第2話)で不老長寿を得ているため、子・孫・曾孫…と多世代から構成されています。
 例)親:オーディン 子:トール 孫:マグニ、モージ、スルーズ ←この三世代が全員ピチピチの若者なのだ!

人間創造メンバー説が語られている=ロキ・ヘーニルは神の中でも最古参の部類に含まれるってコトです。
この考えを補足する論拠は『スノリのエッダ』にも見出せます。
オーディンは戦力増強のために人間や巨人族から引き抜いた戦士を何人も養子に迎えていますが、ロキは扱いが異なり『オーディンの義弟』とされています。
やっぱ、ロキとヘーニルはオーディンと実年齢が近いんじゃないかな?(゚Д゚)
これがいつもトリオで行動する理由だと思います。

ロキ・ヘーニルが真面目に仕事をこなす神でないことは、これまでの記事で書きました。
華々しい活躍を見せているトール・フレイ・フレイヤ等の方が人間から篤い信仰を集めています。
ロキ・ヘーニルより神として有能なのは明らか。
それにも関わらずオーディンがミッドガルドOFF会で必ず二人を連れて遊んでいるのは…

オーディン
オーディン『最近の若いモンは創世紀のことも知らんし、話が合わんわ!』

…と、オッサン世代同士でつるみたかったからだ、きっと!
北欧神話中で似た様なエピソードを探すと、第12話で恋に悩む軍神フレイは幼馴染のスキールニルにだけ相談を持ちかけました。
神様にもジェネレーションギャップってのがあって、ハメを外したい時やプライベートな悩みを相談する時は、同世代の友が良かったんですね。

グダグダ神様トリオ
ロキ&ヘーニルが業務上問題のある神でも、オーディンにとっては気の置けない旧友だったに違いない。

第24話にて、この設定を前提に『何故、神様トリオは人間界へ旅に出るのか?』という疑問を投槍に解消します。

  1. ダメトリオがそんな大層なことしてたなんて…
    へーニルさんの知識とかダメすぎる…

  2. 人間界ツアーでは、そんな偉業の片鱗すら感じないよね。
    ヘーニルさんは妙なところで扱いが良くて謎っす。

  3. 神話を噛み砕いてお話し頂いたので
    本当に楽しみながら拝見することができました。
    勉強になりました。ありがとうございます。
    私見も入っていて主殿の知識の豊富さが伺えます。
    更新を期待しています。

  4. >佐藤緑冨
    ありがとうございます。
    私見が入り過ぎて、もはや北欧神話と別物になっている箇所もありますが…。
    ゆっくり更新ですが、たまにでも御覧頂ければ幸いです。

  5. ヘーニルさんは自分の知性を「全部」与えたんじゃ
    ないでしょうか?
    それまでは賢かった説を推してみます^^

  6. >とおりすがりの方
    な、なるほど…!
    それは思いつきませんでした。
    ヘーニルさんが本来賢かったとすると、
    オーディンの側近ポジションも納得です。

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