第30楽節『悪戯の代償・1』

悪戯神ロキ
北欧神話が誇るマッチポンプ男・ロキ。

ロキの二つ名は『悪戯者』『ずる賢い者』『奸智に長けた者』『騙る者』。
ロキを解説する参考文献では『トリックスター』(英語)とよく称されています。
トリックスターってのは、常識やルールをガン無視して悪戯や犯罪をやらかし、そこから物語の核となる騒動が巻き起こる…という火付け役のこと。
日本人に分かりやすい例は、ねずみ男(『ゲゲゲの鬼太郎』)や磯野カツオ(アニメ版『サザエさん』)でしょーか。
これまでのお話ではロキの悪戯や我が身可愛さのために、イドゥンが攫われたり(第2話)、フレイヤがブリーシンガメンを没収されたり(第8話)していますね(・ω・)
しかしロキの偉いところは、大抵の話で自分が蒔いた騒動の種は自分で刈り取って、収拾をつけていることです。

あらぶるオーディン
オーディン『何とかしないと殺す!!』
ロキ『はいっ!!何とかします!!。・゚・(ノД`)・゚・。』

↑毎回、脅されるせいでもありますけどね(*’ヮ’)

今回は彼のトリックスターとしての魅力が大爆発する話です(当然、良くない方向に)
神話の歴史では、かなり初期の時代と思われます。
その根拠はお話の中で!


アース・ヴァン同盟締結
今は昔。
アースガルドとヴァナヘイムの神々が戦争を止めて、同盟を結んだ後。
雷神トールがいつも通り巨人国まで遠征し、自宅ビルスキールニル城を留守にしていた晩のこと。

トール家の寝室で眠るシフ
トールの正妻シフは夫のいない寝室でぐっすりと眠り込んでいました。

夫が無事に帰還する夢でも見ているのでしょうか?
彼女の寝顔は大変美しく、幸せそうでした。
しかし独り寝のベッドルームに怪しい人影が揺らめきます…。

ほくそ笑むロキ
ロキ『ククク…』

ロキです。
何故、彼がトール夫妻の部屋に入り込んでいるのでしょう。
しかも、その手には鋭い短剣が握られているではありませんか。
ロキは忍び足でベッドへ近寄ると、眠れるシフの頭に刃を押し当てました。
そして無抵抗の女神の肌に容赦なく……!

ザクッ!!

山羊戦車で帰宅するトール
トール『ふんふんふんふふーん♪やっと嫁とイチャコラホイホイできるぜー!(ワクワク』

翌朝、何も知らないトールは山羊戦車をフルスピードで走らせ帰宅しました。
ちなみにシアルビィ少年は、この時代にはまだトールの召使になっていません(・ω・)

トール『今、戻ったぞー!シ…フ……?』

夫婦の寝室へ直行したトール。
愛妻家の彼は、あんなことや、こんなことへのムフフな期待で胸がいっぱいでした。
しかし…

トール『うわあああああああ』
ベッドで彼が目にしたのは、ロキの凶行によって変わり果てたシフの姿だったのです……。

~数時間後~
神々の溜まり場・グラストヘイムにて。

あらぶるトール
トール『叔父貴、よくも…よくも俺のシフを……!!』
ロキ『やだなぁ、トールちゃん。俺がやった証拠でもあるのかい?( ´,_ゝ`)』
トール『あんなことするのは叔父貴しかいねーよ!!』

怒りに燃えるトールはロキに掴みかかっていました。
今にもロキを撲殺しかねない勢いです。
神話を読んだ限り、寝室侵入犯がロキだという証拠は現場に残っていないはずなんですけどね…。
ロキは首飾り事件でフレイヤの寝室に忍び込んだ際も、そっこーで『こんなことするのはロキしかいない!』とバレていました。
神話世界で最も人望の無い男だ(^ω^;)

オーディン『何だ、朝から騒々しい』
トール『親父、聞いてくれ!叔父貴がシフを…シフを…』

トールが寝室で見たもの。
それは……

つるっぱげにされたシフ
頭の毛をツルンッツルン!の丸刈りにされた愛妻シフでした。

……(;´Д`)
シフは美神フレイヤと並び立つ程の別嬪さんで、特に豊かな髪が艶っぽい女神様だったそーです。
彼女は目覚めた後、自分の髪が一本残らず刈り取られているのを知り、ショックで号泣。
美髪が自慢の嫁を坊主頭にされたのですから、トールがぶちキレるのも当然でしょう。

(※神話原作だとツルッパゲというより、ちょびっと毛を残した坊主刈りっぽいんですが…、ドット絵で表現するのが難しいので↑こーなりました)

トール『髪は女の命だぞ!どーしてくれんだ!!』
ロキ『髪の毛なんか放っといたって、また伸びるじゃーん』
トール『つーかさ。どうやってウチの寝室に入ったんだ?』
ロキ『フッ…犯罪のプロである俺の手にかかれば、あんな鍵チョロいもんだぜ( ・`ω・´)+』
トール『うん、やっぱ叔父貴の仕業か^^ ブッ殺す!!
ロキ『お、俺を殺して良いのか!?すぐにシフを元通りにする方法があるんだぞ!?』

”巨人キラー”の名高い軍神に迫られ、ロキの必殺技・『責任取って事態を収拾するから命だけは助けて下さいLv10』が発動しました。

トール『またそうやって口から出まかせを~~!ブッ殺すったらブッ殺す!!』
ロキ『本当だって!知り合いの小人の鍛冶屋に頼めばチョチョイのチョイで直るからさ~~><;』
トール『何ィ~?』
ロキ『まー、俺を殺したって構わねーが、元の長さまで伸びるのには何年かかるのかな~?<( ゚ 3゚)>』
トール『……』

人間の場合、髪の毛は一年で約10cmしか伸びません。
坊主頭からロングヘアになるには数年かかります。
神様にしたって、相当の時間を要するはずですね。
そしてロキが口にする小人族の鍛冶技術は、神々も一目置くほど高度なものです。
きっと本当に秘策があるのでしょう。
トールは性質の悪い悪戯をしたロキにムカッ腹が立って仕方ありませんでしたが、それでもシフの美貌を一刻も早く元通りにしたい気持ちの方が勝っていました。

トール『本っ当~に直してくれるんだな?』
ロキ『戻す戻す♪だから、ぶたないで><』
トール『逃げたりしたら承知しねーぞ!』
ロキ『叔父ちゃんに任せとけって(*’ヮ’)』

何か企んでいるロキ
ロキ『そいじゃ、小人国まで行ってきま~す♪』

こうしてロキは女神シフの髪を丸刈りにした責任を取るため、小人国へと出かけて行ったのでした。

果たして女神シフの美髪は元通りになるのでしょうか?
次回『悪戯の代償・2』に続く。

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