第33楽節『愛の女神の恋・4』

フレイヤ神像
ROの大地でも熱烈に信奉されるフレイヤ様の御神像@セスルムニル
投槍北欧神話・第33楽節『愛の女神の恋・1』
投槍北欧神話・第33楽節『愛の女神の恋・2』
投槍北欧神話・第33楽節『愛の女神の恋・3』

3話も宙ぶらりんなままで引っ張った、フレイヤ様の恋路の行方はいずこへ向かうのでしょうか。


オッタルとアンガンチュール
今は昔。
神に仕える戦士オッタルとアンガンチュールは、『家系暗誦記憶力+高貴さ対決』することになりました。
負けた方は全財産を失ってしまいます。
アンガンチュールに丸め込まれた形のオッタルに勝機があるとも思えず…?

フレイヤ出立
またまた、舞台は変わって神の国アースガルド。

夜更けの大地はひたすら暗く、ただただ静まりかえるばかり。
その静寂の中、フレイヤは居城セスルムニルから歩み出るところでした。
彼女は美しい黄金の体毛に被われた猪に跨ります。
豊穣と勇猛の象徴である猪は、双子の兄フレイと同じくフレイヤの眷属でもあります(*’ヮ’)n

女神が鞭打つと、猪はまさに猪突猛進と呼ぶに相応しいスピードで走り始めました。
金色の輝きが道を明るく照らすので、闇の中でも難なく蹄を運べるのです。
女神が一路目指す先にあるのは巨人国ヨーツンヘイム。
珍しくフレイヤ様が軍神として、直々に巨人征伐でしょうか?

巨人国の岩山
巨人国の殺風景な岩山に辿り着くと、女神を乗せた猪はようやく足を止めました。

大きな石の合間をよくよく見れば、深い洞窟が口を開けているではありませんか。

*『グォオォォーッ!グォアガァァアーッ!ゴォオオォオウォーッ!』

穴の奥底からは冷たい隙間風と、この世のモノとは思えぬ凄まじい咆哮が押し寄せてきます。
これは相当のバケモノ級な巨人か…!?
フレイヤ単騎で勝ち目はあるのか…!!?

フレイヤ『よーし、いるわね…!』

軍神フレイヤはスゥーッと深く息を吸い込んでから、バケモノ(?)の唸りに負けない大声で叫びました。

トモダチ!!
フレイヤ『ヒュンドラちゃーん!大親友のフレイヤよっ!起ーきーてーー!』

何てこった。
この洞窟の住人はフレイヤの知己だったのです。

ヒュンドラ『んんん…?ふぁーあ…ムニャムニャ…』

洞穴の主は女巨人のヒュンドラさん。
さっきの唸り声は彼女の豪快極まるイビキでした。
睡眠時無呼吸症候群が疑われますね…。

巨人の起床
フレイヤの呼びかけに起こされ、ノソノソと寝床から現れたヒュンドラは…だいぶ残念なお顔立ちでした。

彼女の住処は洞窟、ブッサイクで下品なイビキ、着物もボロボロ…と北欧神話の価値観では、完全に性的な魅力を欠く女性と言えます。
美神の友にしては意外なタイプ?

ヒュンドラ『あーあ、良い気持ちで寝てたってのに…こんな時間に何の用だい?』
フレイヤ『緊急事態なのよ!ヒュンちゃんの助けがいるから、アースガルドまで一緒に来て!!』
ヒュンドラ『はぁ…!?』
フレイヤ『私の猪はデリケートだから二人乗りはできないわ。マイ乗り物を出してね!d(・ω・´)』
ヒュンドラ『猪…?(ピクッ』

フレイヤはヒュンドラの都合などお構いなしに、自国への同伴を急かします。
ところが巨人女は猪を一瞥すると、冷たく呟きました。

ヒュンドラ『なーにが猪だ…。それアンタの彼氏オッタルの変身形態じゃん…』
フレイヤ『なっ、ななななにを言ってるのかしらっ…!?』
黄金の猪『ブヒッ!?Σ(´Д`;)』

ヒュンドラのとんでもない指摘に女神は慌てて説明します。

フレイヤ『こ…これは小人の鍛冶屋ダーイン&ナッビが精錬した人造猪ヒルディスヴィニよっ!』
ヒルディスヴィニ『ブーブー!(´Д`;)』
(猪語訳:そうっス!自分、オッタルじゃないっス!)

ヒュンドラ『小人が精錬したって設定は兄貴の猪でしょが…( ´,_ゝ`)』
フレイヤ『わ、私も…えーと…お兄様とお揃いが良かったのっ仲良しなのっっ><;』
ヒュンドラ『あっそ…。アタシャ、眠いんだよ…ムニャムニャ…』

しどろもどろの弁舌では肯定したも同然。

オッタルがヒルディスヴィニに変身
そう。
実際のところは、ヒュンドラが嘲笑う通り。
フレイヤの乗用猪は、前回登場した人間のオッタル君がメタモルフォーゼしたものでした。
何を隠そうオッタルは軍神フレイヤ配下のイケメン筆頭戦士だったのです。
しかも主従関係を超えた、フレイヤのイマカレらしい…。
前々回に見せた夫の死を嘆く涙は何だったんだァアァァーッ!?
詳しい解説は後回しにします(・ω・)

フレイヤ『そ、そんなことより、緊急事態だって言ったでしょ!?一緒にアースガルドまで来てーーー!』
ヒュンドラ『その、きんきゅーじたいって何なワケ。。。』
フレイヤ『時間が無いから、追々説明するわ!(・ω・´;)』
ヒュンドラ『オハナシになんないね、お・や・す・み^ー^』
フレイヤ『美肌の祝福をあげるから~、お願い~~><;』
ヒュンドラ『睡眠妨害される方が美容にゃ悪いンじゃないの!?』
フレイヤ『ヒュンちゃんが、トール(※巨人退治班リーダー)に成敗されない様に便宜を図ってあげるしー』

ヒュンドラが面倒がって断っても、フレイヤはしつこくしつこく頼み込みます。
どうあっても寝かせてくれそうにないので、女巨人も遂に折れ、アースガルド行きを了承したのでした。

巨大狼:北欧神話におけるバイク的存在(?)
彼女は住まいの洞穴から、ビッグ狼(※乗り物)を伴って出てきました。

第9話に登場した怪力の女巨人ヒュロッキンさんも、巨大な狼を乗り回しています。
巨人界ではメジャーな交通手段なんですかね…。
かくして猪に跨った美しい女神と、狼に跨った醜い女巨人はアースガルドまで爆走することになったのです。
オッタル君が化けた戦猪ヒルディスヴィニが、仮にフレイのグリンブルスティ(第30話)と同スペックだとすると、かなりのスピードが出たと予想できますが…

驚き逃げ惑う山羊ヘイドルーン
この二人がアースガルドに到着した際、ノンビリ草を食んでいた雌山羊ヘイドルーン(※オーディンのペット)は猪&狼の凄まじい勢いにビビッて逃げたそうな。
暴走運転いくない!

ヴァルハラ城門前に降り立ったヒュンドラは尋ねました。

ヒュンドラ『んで、ここでアタシに何しろっつーのさ?』
フレイヤ『今、人間界にはオッタルとアンガンチュールという二人の英雄的戦士がいるの…』
ヒュンドラ『だからさー、そのオッタルがアンタの乗ってる猪でしょーが!』
フレイヤ『ちっ、違うったら違うもん!』

麗しい女神はとうとうと言葉を紡ぎます( ´,_ゝ`)

フレイヤ『オッタルはそれはそれは素晴らしい信仰心の持ち主で、私を讃える祭壇に祀火を絶やしたことがないのよ。その熱で祭壇の石が全てガラスに変わる位にね!うふっ(*^∀^)』
ヒュンドラ『あーはいはい』

化学的な解説。
自然界の石の主成分はケイ素です。
二酸化ケイ素等は高温を与えるとガラス状態になるので、献火の熱心さを↑の様に表現という訳。
ただガラスと言っても我々が日常で手にする透明度の高い物は、原始的に石を加熱しただけじゃできません。
黒曜石みたいなガラス質の鉱物に化学変化した…と考えるのが妥当かと。
炎に煌めくガラス質の祭壇を想像すると、美神フレイヤを奉るに相応しい壮麗な光景が目に浮かびます。

本編に戻りましょう。
フレイヤのオッタル自慢はまだまだ続きます。

フレイヤ『それにオッタルは私に新鮮な雄牛の血を捧げることも忘れないの><サイコー!!』
ヒュンドラ『へー。。。』

ニヨ一家が生贄の血を受ける神であると、シリーズ初回に説明しました。
物語的に考えるなら、フレイヤが牛の生き血でキュッ♪と一杯やってるんでしょうかね…?
フレイヤ教における信仰の実態は、この様に神話中で明かされていますので、是非ROラヘルでも教皇様やニルエン大神官に『牛の鮮血祭り』を開催して頂きたいものですね。

フレイヤ『ほんとオッタルったら、敬虔な私の信者で~~vv
ヒュンドラ『はいはい、おノロケだったら帰るワ…』
フレイヤ『待って待って!ここから本題だし!!』


フレイヤ『彼にはライバルがいて、家系暗誦で対決を申し込んで来たのよ。勿論、オッタルはキリリと格好良く、勝負を受けて立つと宣言したんだけど!』
ヒュンドラ『あーあーうんうん。それで?(ハナホジ』
フレイヤ『オッタルに連なる先祖の系譜を教えて頂戴!!(`・ω・´)』
ヒルディスヴィニ『ブヒッ!ε=(`・ω・´)』
ヒュンドラ『エェ~。。。』

はい。
ようやく今回の全貌が明らかになりました。
ヒュンドラはオッタルと赤の他人ですが、実はかなりの知識を持った巨人で『古今東西における人間界の歴史』に精通しているのです。
豪快な姐さんの割りに意外な特技。。。

つまり今回のあらすじは…

フレイヤ、自軍のイケメン兵オッタルと愛人関係になる
 ↓
アンガンチュールがオッタルの馬鹿さを利用して、先祖暗誦対決を持ちかける
 ↓
オッタル『俺の先祖をコケにしやがったな!受けて立つわ!!ムッキーー!』
 ↓
オッタル『やべぇ、ノリで決闘を受けたけど先祖わかんねぇ…(;^ω^)』
 ↓
オッタル『フレイヤ様~、助けて欲しいッス!!。・゚・(ノД`)・゚・。』
信奉する女神(…というか情人である)フレイヤに助けを求める
 ↓
フレイヤ『全財産がかかった勝負!?よーし、私に任せて!(・ω・´)シャキーン』
 ↓
フレイヤ『…よく考えたら、私も先祖なんて分からないわ…(・ω・`)ショボーン』
 ↓
フレイヤ『インテリ巨人のヒュンちゃんから先祖を教えて貰おう!(・∀・)ピコーン』 ←いまここ

こういうことです。
オッタルの人生かかった勝負なのに、この無計画ぶりは何だよ!!
バカです…。
こいつらは色々な意味でバカップルです。

家系を語り始めるヒュンドラ
ヒュンドラ『自分の先祖もうろ覚えなんて、脳筋にも程があるんじゃない。。。』
ヒルディスヴィニ『ぶー…(TωT;)』
ヒュンドラ『んまー、約束しちまったし。さっさと帰って二度寝したいし。教えてやろうじゃないの』
ヒルディスヴィニ『ブーブー!(・∀・)』
フレイヤ『やったーー!ヒュンちゃん大好きー!!.゚ヽ゜・。+(>∀<)+。・゜ +.』

白みかかった空を背に、賢い巨人はオッタル家の系譜を諳んじます。

ヒュンドラ『いいかい、アホのオッタル。アンタの親父さんはインステイン。爺さんはアールヴ、ひい爺さんはウールヴで…』
ヒルディスヴィニ『ブヒー!』
フレイヤ『ちょっと、どこ見て話しかけてるのよ!それはオッタルじゃなくてヒルディスヴィニだからっ;;』
ヒュンドラ『もういいから、そのネタは…』

第33楽節 『愛の女神の恋・5』に続く!

  1. 初めまして、北欧神話について調べてる時にこのサイト様に出会いました。凄く面白い文章で読んでいてとても楽しいです♪これからも楽しみにしています!( ´ ▽ ` )

  2. わざわざありがとうございます。
    あやふやな知識をまことしやかに披露しててごめんなさい…(*’ヮ’)
    参考文献のマジメな神話解説本も、機会があれば是非お読みになって下さい。
    (ステマじゃないよ!)

  3. はじめまして、フレイヤと神話で検索してたどり着きました。
    ROをやってたことがあったせいか、非常に面白かったです。
    神様って結構いいかげんなのよねー

  4. >オーディン様・ななめ様
    更新・返信が遅くてすみません。
    き、近日中…?に投稿すると思います。
    >通りすがり様
    御訪問ありがとうございます(・ω・)
    神様は本当にテキトーですね。。。
    そのテキトーぶりが面白くもありますが。
    ROは新MAPが微妙に神話由来だったりするので、無料期間等に観光にいらしてください(・ω・)

  5. ちょっと!更新するするいって全然されないじゃないの!どういうことなのよ!

  6. とっても遅くなりましたが、更新っぽいものをさせて頂きました。スミマセン…スミマセン…。

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