投槍北欧神話・第14楽節『破滅を呼ぶ子供達・1』
投槍北欧神話・第14楽節『破滅を呼ぶ子供達・2』
投槍北欧神話・第14楽節『破滅を呼ぶ子供達・3』
の続きです(‘◇’*)
今は昔。
ロキの息子である狼フェンリルは『オーディンの殺害者になる』と予言されました。
そこで神々は狼を捕縛する方法を模索したのです。
【作戦1】
レーディングと呼ばれる鉄の鎖で縛り上げる(‘◇’*)
オーディン『お前はこのレーディングより強いかな?ちょっと比べっこしないかね?』
フェンリル『頑丈そうな鎖だな。でも俺の方が強いさ』
…こ、この狼、喋るぞ…!?
神々は言葉巧みにフェンリルを誘い、レーディングで首から足までグルグル巻きにしてやりました。
しかし…
フェンリル『ハァァアァアアアアアアアアァァアアァアッ!』
バチーン!
彼が全身の筋肉に力を込めると、レーディングは音を立ててバラバラに弾け飛びました。
ケンシロウがよくやる筋肉表現は古代北欧時代から存在した!
フェンリル『ハッハー、どんなもんよ♪』
オーディン(くっ、失敗だ…)
【作戦2】
レーディングの2倍頑丈!という触れ込みの鎖・ドローミで縛り上げる(‘◇’*)
オーディン『ドローミを断ち切れたら、お前は怪力名声ランカーになれるぞ?』
フェンリル『がんばる』
狼は再度の挑戦に受けて立ちました。
ドローミで身体中をがんじがらめにされて、そして…
フェンリル『ハァァアァアアアアアアアアァァアアァアッ!』
バッチーン!
彼が前回と同じ様に筋肉に力を込めると、見事ドローミは砕け散りました。
ドローミは『鎖の輪が船の錨と同じ』というビッグサイズらしーです。
こんなもんをバラバラにするフェンリルは正に化け物…。
フェンリル『これで俺はランカー入りだな♪』
オーディン(これはまずい…。私は本当に殺される気がしてきた…)
【作戦3】
オーディン『仕方ない、捕縛アイテムを外注しよう』
自作アイテムの限界を感じた神々は、鍛冶能力に優れた小人に足枷を発注することに決めました。
ここで使者に選ばれたのはフレイの部下で親友のスキールニルです(第12話参照)
スキールニル『またおつかいミッションか…』
スキールニルはアイテム代金の黄金をどっさり持って小人の国へ向かいました。
神話によると『地下にある小人国は寒くて暗くて湿気すごい。小人の鍛冶屋はブサイクだらけで、ボソボソした声で会話しながらアイテム製造に熱中しててマジキモかった』とあります。
手先が器用で仕事内容には定評があるし、資産家も多いんだけど、神々からキモがられている小人族。
小人は現代日本でいうステロタイプなオタクみたいな扱いです。
2000年経っても『キモイ・キモくない』の価値観ってあんまり変わらないのでしょうか。
命懸けで巨人国に行ったり、キモイ小人国に行ったり、スキールニルも大変だなぁ。
スキールニルはおつかいから帰って来ると神々から大層ねぎらわれたそうな。
多分、ねぎらいの半分が『捕縛アイテムを持って帰ってきてえらい!』で、もう半分は『あんなキモイ小人国に行くなんて勇者だ!』という意味だと思います。
しかし彼が捕縛アイテムを最高神に献上すると、神々はざわめきました。
ドローミ以上のごっつい鉄鎖を想像していたのに、それは絹糸に似た細い紐だったのです。
オーディン『何だこれは…。えらく頼りないが…』
スキールニル『新素材で加工したグレイプニールという魔法の紐です』
オーディン『新素材?』
スキールニル『原材料は鳥の唾+熊の筋+猫の足音+女人のひげ+石の根です』
オーディン『なんだそりゃ…ますます不安になってきたではないか』
スキールニル『大丈夫ですよ。小人はキモイけど、仕事は確かです。オーディン様のグングニールも小人が製造したじゃありませんか』
オーディン(駄目だったら返金して貰おう…)
ROのグレイプニール材料は神話そのまんまなのね(・ω・)
これらの品物は小人達が鍛冶の材料として使ったので、この世から見当たらなくなったのだそーです。
グレイプニールの効力に半信半疑でしたが、ダメ元でフェンリル捕縛に再々挑戦してみました。
オーディン『フェンリルよ、このグレイプニールをちぎれるか?』
フェンリル『ずいぶん細い紐だな、なめてんのか?』
オーディン『怪力ランカーのお前なら楽勝だろう。これを壊したら、お前に付けている監視はなくそう。さぁ!』
フェンリル(あからさまにあやしい…)
フェンリルは力だけでなく知恵も随分ついていた様で『神は自分をハメるつもりでは?』と察知しました。
フェンリル『これさ、魔法とかかかってない?特殊アイテムなんじゃないの??』
オーディン『(ギクッ…!)な、何を言っているのやら。ここで逃げたら、臆病者ランカー入りだぞ』
フェンリル『じゃあ、嘘でない証に誰か俺の口に手を入れろ。
嘘だったら全力で噛む』
神々は逡巡しました。
だって、特殊アイテム・グレイプニールでフェンリルを捕らえる気マンマンなのですから。
怪獣フェンリルの口に手を突っ込んだら、グレイプニールが変哲ある紐と分かった瞬間に噛み切られてしまいます。
嫌な空気が流れる中、一人の神が右腕を差し出しました。
チュール『このアースガルドトップブリーダーに任せて!』
これまでフェンリルの世話をしてきたチュールさんです。
彼が口に手を入れたのでフェンリルも信用して、神々にグレイプニールで身体を縛らせました。
フェンリル『ハァァアァアアアアアアアアァァアアァアッ!』
狼は全筋肉に力を込めました。
しかしグレイプニールはちぎれるどころか、魔法の力でぐいぐい食い締めてきます。
どんなに力んでも暴れても緩む気配は一向にありませんでした。
神々『やった!成功だ!!.゚ヽ゜・。+(´∀`*)+。・゜ +.』
フェンリル『嘘ついたな…、お前らは俺を謀ったんだな…』
狼は自分が咥えているチュールの右腕を見ました。
チュール『い、犬は耳の後ろを撫でると大人しくな…』
フェンリル『がぶっ!』
チュール『ギャーーーー!』
神A『うわあああああ、チュールさんしっかり!(;´Д`)』
ロキ『ワンパクでも良い、逞しく育って欲しい(`・ω・´)』
オーディン『逞しいという次元か…?』
アースガルドトップブリーダー、飼い犬に手を噛まれる。
こうしてフェンリル狼の捕縛には成功しましたが、約束破りの代償としてチュールは右手を失いました。
彼は隻腕の軍神として最終戦争ラグナロクでも勇敢に戦いますが、地獄の番犬ガルムと対峙、戦死します。
多分…
チュール『い、犬は耳の後ろを撫でると大人しくな…』
ガルム『がぶっ!』
チュール『ギャーーーー!』
こんな戦いだったんだと思います。
犬運のない神、それが軍神チュール。
さて。
神々はフェンリルを縛っているグレイプニールに大鎖を繋ぎ、鎖の先には巨大な岩をくくりつけ、その岩を地下1.6kmに埋め、その場所に重しとして岩山を乗せました。
更には、大きく開いた彼の顎に剣をつっかえ棒代わりにぶっ刺して、二度と神を噛んだりできない様にしたのです。
流石に『最高神を殺す』と予言されただけあって、念の入れ方が半端じゃない。
閉じることのできないフェンリルの口からは、すさまじい量の唾液が垂れ流されヴォーンという川になりました。
臭そう。
長男フェンリルには苦戦しましたが、ロキとアングルボダの子供3人を追い払った神々は安心して暮らしましたとさ。
めでたしめでたし…?
いいえ、違います。
この話から遠い先の未来、予言は全て現実となるのです。
フェンリルは最高神オーディンを飲み込み、ヨルムンガンドは雷神トールと相討ち、ヘルは冥界の住人達を率いてアースガルドに侵攻し、神の世は終りを告げるのです。
『おのれ、オーディンめ…!』
辺境に追いやられた三人の兄妹達は、光り輝く神々の国を恨みがましい目で見上げています。
いつか世界に綻びが生じる、その日までずっと…。
あれれ、今回は真面目に終わった…
予言を恐れて束縛した結果、予言通りになったっていうことは、予言を無視して仲良くしてたらまた違う結果になったんでしょうか(・ω・)
まぁ神話の中のお話なので、「もし」はありえないのだけどもー(゚д゚)
卵が先か鶏が先か…って思うよねー。
でもロキの他の子供であるハティ・スコール兄弟は神話の時代中ずーっと太陽神と月神をストーキングしてるから、どっちみち対立したんじゃないかなぁ(・ω・)
ラグナロクにダイレクトで関わりのある話は暗いから、あんましいぢれなかった。
次は笑い所の多い話で・・・
シリアスだけど面白かったー!
>あげはさん
過去へのタイムスリップを研究してた友人が、過去に戻って未来を変えようとしても巡り巡って結局同じ未来になるという結論に達してました。
おとーさんのロキがあんなんだから、アスガルドにいてもなんやかんやで問題起こしたような気がしますw
>過去へのタイムスリップを研究してた友人
タイムスリップの研究…!?
そっちの方が気になる(゚Д゚)
古代北欧の人々は『運命は絶対的な物!』とゆー価値観があるみたいで、現代人が後から読むと謎に思う箇所がいっぱいありますね…。
現実的に考えると怪獣サイズの狼・蛇、下半身が腐った人がのしのし歩いてたら、確実に社会問題になったと思う。