投槍北欧神話・第３５楽節 『空を旅する者と雷神・１』
投槍北欧神話・第３５楽節 『空を旅する者と雷神・２』
投槍北欧神話・第３５楽節 『空を旅する者と雷神・３』

やっと雷神様の登場だー。
※今回も御多分に漏れず捏造特盛です。あしからず。

今は昔。
巨人国を旅していたロキは慢心が祟り、巨人ゲイルロドに捕縛されてしまいました。
３ケ月にも及ぶ拘禁に耐えかね、遂に彼は正体を自白。
解放の条件として『丸腰の雷神トールを連れて来る』と約束したのでした。

アースガルドに舞い戻ったロキは、間髪入れずミッションに取り掛かります。

巨人対策班リーダーであるトールを、どの様に巨人国まで誘き出すのでしょう。
それには勿論、ロキお得意のスキルが輝くに違いありません。

トール『何だよ、叔父貴。こんな所に呼び出して』
ロキ『トール、恥ずかしい話だが、折り入って頼みがあるんだ』
トール『頼み？』
ロキ『これから俺と一緒に巨人国で２on２の…』
トール『巨人国！？２on２！？決闘か、決闘なんだな！！』

”巨人キラー”の異名を取る軍神・トール。
別のお話で巨人最強戦士と決闘した事（第１５話）もある彼は、戦いの予感に目の色が変わります。
しかし、ロキが発した次の言葉で、もっともっと目の色が変わる事になるのです。

ロキ『２on２の合コンしようぜ(*^ヮ^)』
トール『ご、合コンだとーー！？』

予想していた武力的な戦場ではなく、別な意味での男の戦場に誘われたのです。
トールは美嫁シフを大事にする一方、愛人のヤルンヤクサとの間に息子マグニをもうける等、けっこー女好き。
ロキの嘘話に思いっくそ喰いつきました。

ロキ『こないだ巨人国にリゾート行った時さ～、現地の美人なネーチャン２人組をナンパしたんだけど～』
トール『うんうん、ふむふむ、美人なネーチャン！？』
ロキ『その娘達ってばさー、アタシ達～、雷神トール様の超ファンなの～！（裏声）』
トール『俺の！！ふぁん！！！』
ロキ『ロキ君って、トール様の叔父さんなの～！超スゴくな～い！？（裏声）』
トール『それで！？続きは！！！？』
ロキ『親戚ならトール様に会わせて～！！（裏声）』
トール『うおおおおおお、まじかああああ！！！』
ロキ『つー訳で、合コンセッティングする約束しちゃってさ～。ここは俺の顔を立ててくれよっ★ミ』
トール『行く行く！！超行く！！！』
ロキ『ま～、２on２の合コンつっても、２人共トールファンだし？実質、両手に花だよな～』
トール『両手に…花…！（ｺﾞｸﾘ』
ロキ『俺は飯だけ食ったら、適当に退散すっから！モテる男は辛いね＾＾』
トール『いや～悪ィな～デヘヘ』

こうしてロキはトールの男心を巧みに操り、巨人国への旅路を了承させたのです。
…ここでさー、素直に巨人から脅迫されてる事を話して、ゲイルロド征伐に向かえば良いと思うんだけどね～。
ロキは世渡りが上手いんだか、ド下手なんだか、紙一重な奴ですね。
もっとも巨人ゲイルロドはロキの変身を見破ったり、かなり厄介な強敵でしたから、大人しく脅迫に屈した方が得策と判断したんでしょうか。

トール『そんじゃ気合い入れて準備すっか！！！（ﾜｸﾜｸﾃｶﾃｶ』

言うが早いか、トールは腕力を倍加するベルト・メギンギョルド、常勝無敗のハンマー・ミョルニールをいそいそと装着し始めたではありませんか。
これは例の巨人が『トールに装備させるな！』とロキに厳命した、対巨人兵器フルセットです。
このままではミッション失敗→ロキ死亡コースまっしぐら。
ロキは慌ててトールを説き伏せます。

ロキ『と、トールちゃん、今回はそんなに装備要らないと思うよっ！？決闘じゃなくて合コンだよ！！』
トール『何で？相手は俺ファンなんだろ？』
ロキ『そ、それはそうですけど…』
トール『じゃあ、生ミョルニールとか、俺の本気パワーとか見たいんじゃねーの？？』
ロキ『うぐっ…』

ぺらっぺらな嘘がさっそく露呈しかけています。
裏切り者は一体、どう取り繕うのか…。

ロキ『ば、馬っ鹿野郎！お前の強さなんて世界中に知れ渡ってんだから、ここはギャップ萌えを狙え！』
トール『ギャップ萌え…だと…』
ロキ『ミョル装備じゃない、OFFの日のカジュアルなお前の方がレアだし、意外性あるだろ！』
トール『確かに！』
ロキ『「私服のトール様も素敵～！抱いて！（裏声）」となる寸法よ』
トール『流石、叔父貴は女体化できるだけあって、女心に詳しいな～』
ロキ『フッ、伊達に女子力はカンストしてないぜ！』
トール『んじゃあ、山羊戦車は…』
ロキ『要らねー要らねー。ミリタリー色は無し！カジュアルに徒歩で行くぜ』
トール『おｋ♪』

ロキ（ほんとトールがスーパー馬鹿で助かるわ。。。）

…現実にギャップ萌え戦法を狙うと「オフィスではスーツ姿が恰好良かったのに、私服がダサくて萎えた」とか、失敗しがちなんですけどね！
誰かの体験談じゃないぞ！

ともかく。
この様に言葉巧みに誘い、ロキはトールの武器防具を丸っと剥がす事に成功しました。
天性の詐欺師ですね。
なお山羊戦車について神話では特に言及されていません。
『二人は徒歩で巨人国へ向かった』とだけ記されています。
トール＆ロキの冒険譚の中でも戦車無しで出立したのはこの回のみ。
（※旅の途中で徒歩になるパターンはある）
きっとトールの戦力を削ぐために、ロキが徒歩を推したのでしょう。

懐かしの第２話、女神イドゥン拉致事件。

以前にも、ロキは保身のため、身内を巨人に売り飛ばしています。
女神イドゥンの場合は、彼女の守護担当である『黄金の林檎』をダシにおびきだしていました。
今回のトールは『美女との合コン』が餌。
つまりロキはターゲットが好きなモノをよーく心得ていた訳っす。
トールが好きな物としては他に、バトル・農業・メシ・酒が挙げられますけど…、やっぱ可愛い女の子が一番好きだったのかな(*’ヮ’)

さてさて。
ロキのでっち上げた合コン話にまんまと騙されたトール。
このまま巨人国に向かったら、待ち受けているのは美人のネーチャンではなく、悪の巨人ゲイルロドです。
その運命や如何に。

投槍北欧神話・第３５楽節 『空を旅する者と雷神・５』に続きます。