第35楽節 『空を旅する者と雷神・5』


投槍北欧神話・第35楽節 『空を旅する者と雷神・1』
投槍北欧神話・第35楽節 『空を旅する者と雷神・2』
投槍北欧神話・第35楽節 『空を旅する者と雷神・3』
投槍北欧神話・第35楽節 『空を旅する者と雷神・4』
義理の叔父・甥であるロキとトール。

よくペアで活動する親友同士…と語られていますが、今回のお話では二人のビミョーな人間関係を観察できます。
つー訳で!

ロキとトールの大冒険が今、始まる…!


嘘の合コン話でトールを騙すロキ
今は昔。
巨人ゲイルロドに脅迫されたロキは、雷神トールを丸腰でおびきだせと命令を受けました。
難易度の高い条件だったものの、ロキは得意の話術で「美女との合コン」だとトールを騙す事に成功。
二人の神は連れ立って巨人国へと向かうのでした。

旅するロキとトール
トール『合コンー!合コンー!俺らはー元気ーー!』
ロキ(ほんとチョロい奴…^q^;)
トール『ところで、巨人国のどこで合コンやるんだ?』
ロキ『ゲイルロドって巨人の家で宅飲み~(*’ヮ’)』
トール『ゲイルロド?それって男の名前だよな…?』
ロキ『美人なネーチャン達の親父だよ。まぁ、心配ねーさ!』
トール『……』

美女との酒宴に心躍らせていたトールでしたが、徐々に嫌な予感を持ち始めました。
父親付きの合コンなんて全っ然楽しくない…ゴホンゴホン。
それもそのハズ。
神と巨人は生まれながらの敵同士。
キルスコアNo.1の神トールを歓迎してくれる巨人の方が少ないのです。
特に、男性巨人は戦士である確率が高いのですから、なおさらでしょう。
しかし…

ロキ『それにしても楽しみだな~。お前、モテるんだな~(*’ヮ’)』
トール『お、おう!!俺のファンだからな!!』

やっぱトールは馬鹿でした。

巨人国の森
ロキ&トールが巨人国の深い森に差しかかった頃。

ゲイルロド領はまだまだ先ですが、既に日が暮れ出していました。
ファルコンローブも山羊戦車も無しの徒歩旅行じゃ時間かかるよね~。

トール『今日はここいらで野営すっか』
ロキ『いや、この近所に知り合いが住んでるから、泊めて貰おうぜ』

巨人国に住まうからには、その知己とは巨人族に違いありません。

Q.さて、一体誰でしょうか?
答えは…

ロキ『そこの角を曲がると、オーディンの彼女のグリッドん家だ!
トール『おお、ちょうど良いな!』

上京しろと言われるヴィダル
A.巨人グリッド(第20話参照)でした。

グリッドさんはオーディンの愛人で、軍神ヴィダル君の生母です。
ロキ…。
お前、絶対オーディンの許可を取ってないだろ!
女性の一人住まい、しかも最高神の妾宅に男二人で押しかけて良いの。。。?
更にロキは原作で次の様に述べています。

ロキ『あの女の玄関はいつも鍵がかかってないんだぜ(*’ヮ’)』
トール『…何で、そんな事知ってんだ?』
ロキ『それは企業秘密なんだぜd( ・`ω・´)+』

まぁ、「玄関に鍵がかかってない=旅人を気軽に受け入れてくれる寛容な人」という比喩なのでしょうけどね。
北欧神話では、旅人に親切な人=徳の高い人です。
言葉通りに取った方が面白いので、投槍解釈ではコレでいきます。
ロキはオーディンの密偵ポジションですから、他人のプライバシーには詳しいでしょう。

グリッド邸訪問
ロキ『ごめんくださ~い!』
トール『悪ィけど、一晩泊めてくれー』
グリッド『あら、珍しいお客さんね。上がんなさいな』

突然の来訪にも関わらず、ロキの前情報通り、グリッドは快く歓迎してくれました。ええ人や。
ロキはオーディンの義弟、トールはオーディンの息子、そしてグリッドはオーディンの愛人。
お互いに血は繋がっていないものの、親戚筋って事になりますしね。

その夜。

グリッド邸の食事
ロキ『ばくばくむしゃむしゃぱくぱくもりもりがつがつもぐもぐばりばりぼりぼりぐびぐびごっくん!!』
トール『ばくばくむしゃむしゃぱくぱくもりもりがつがつもぐもぐばりばりぼりぼりぐびぐびごっくん!!』
グリッド『本当によく食べるわねぇ。。。』

グリッドは美味しいゴハンとビールを食卓に並べて、訪問者をもてなします。
北欧神話有数の大食神である2人を賄うってスゲーな。
話は変わりますけど、最高神オーディンはアースガルド王宮では断食生活です(第23話
他方で、オーディン・ロキ・ヘーニルのトリオ旅行では肉をクチにしてるっぽいと、以前お話しました。
つーことは当然、愛妾宅でも、めっっっちゃメシ食い貯めしてそうですよね。
今回、ロキ&トールに配膳されたのは、最高神用の食料だった説を提唱します。
食べちゃって良いの。。。?
与太話はコレ位にしておいて。

グリッド『ところでアンタ達、どこに向かってるの?巨人成敗にしちゃ軽装よね』
ロキ『えっ。あっ、合コンでーっす!(;’ヮ’)』
トール『おう。ゲイルロドの家で俺のファンと合コンだ。俺のふぁんと!!』
グリッド『ゲイルロド…!?』

ゲイルロドの名を耳にすると、グリッドは一瞬だけ顔色を変えました。
しかし、それは本当にわずかな瞬間だけでした。

グリッド『ロキ、お肉足りてる?お代わり遠慮しないで!^^』
ロキ『もちろん頂きます!!( ・`ω・´)+』
トール『俺もビールもう一杯たのむぜ!』

彼女はすぐにニコニコと給仕を続けたのです。

眠るロキ、密談するグリッドとトール
ロキ『ごちそうさまでした!!あ~、食った食った~♪』

万事上手く進んでいる安心感と、お腹いっぱいになった満足感からか、ロキはあったかい暖炉の前で眠り始めました。
食卓にはグリッドとトールだけが残されたのです。

グリッド『…トール、よく聞きな。ゲイルロド一派は神々に好意なんか持っちゃいないよ』
ロキ『ウィ~ヒック!何だって?ヒック!』

悪戯神が寝入ったのを確認すると、彼女は真剣な眼差しでトールに語り始めました。

グリッド『奴らはフルングニルの殺し手を心底、憎んでいる…』


フルングニルとは第15話で決闘の末、トールに殺された巨人族の戦士です。
今回の黒幕ゲイルロドは何とフルングニルの盟友だったそーで、トールに仇討ちするつもりでした。
巨人族のグリッド姐さんは、この辺の事情に通じていたのです。
流石、最高神オーディンの愛人だけあって、トールの危機を案じてくれたんですね!
しかし…

トール『フルングニルの殺し手?フルングニルを殺したのって俺だぞ~?ウィ~ヒック』
グリッド『だから!!アンタの身が危ないって言ってんの!比喩とか例えとか分かんないの、このうすらトンカチ!!』
トール『ひぃ!』

持前の脳筋に加えて大量のアルコールが入っていたトールは、せっかくの忠告もさっぱり頭に入りませんでした!

グリッド『アンタ、ロキに騙されてんのよ。丸腰で行ったら合コンどころか処刑よ!』

グリッドは馬鹿向けの易しい言い回しで…ゴホン…単刀直入に話します。

トール『しかしよぅ、ミョルもメギンもアースガルドに置いてきちまったぜヒック』
グリッド『よし、アタシの棍棒と力帯を貸してやるよ!』

グリッドのセット装備
トールは「グリッドの棍棒」を手に入れた!
トールは「グリッドの力帯」を手に入れた!
トールは「グリッドの手袋」を手に入れた!

グリッドは武器庫から、自分のお宝装備を持って来てくれたのです。
トールの得意武器である鈍器、鉄の手袋、そして物理攻撃力アップ効果を持つベルト。
これなら雷神本来のフルパワーが期待できそうです。

こんな武具を所持していたって事は、グリッドさんはトールと同系統の能力を持った戦士なのかな?
息子ヴィダルは神話末期、歴史に残る一撃必殺キックを放っているから、明らかに近接物理攻撃系の軍神だし。
グリッド=近距離パワー型 と断定して良さそうです。
(あれっ、オーディンの彼女って鬼嫁系ばっかりじゃね…?^q^)

トール『ウィ~ヒック恩に着るぜ、グリッド!ヒック』
グリッド『ま、今日のところは明日に備えて寝るんだね』

こうしてトールはピンチに陥る前にグリッドから真相を知り、装備まで得たのでした。
グリッドは機転が利いて、情のあるイイ女ですね。
ヴィダル君にも、最強の靴・ヴィダルブーツ(※防具兼、武器)を授けて上京させてるし。
登場回数こそ少ないものの、実は北欧神話No.1の良妻賢母じゃないかと思っています。
本来の良妻賢母神であるフリッグ妃は、けっこー性格が偏っているもんね。

さーて。
グリッド姐さんの思いがけないファインプレーで、巨人&悪戯神の悪事が露見されちゃった訳です。
ロキ&トールは一体どーするのでしょうか??
そして翌朝…。

グリッド『支度はできた?』
トール『おう。世話になったな!』
ロキ『うっ!?』

グリッド装備を見たロキ
ロキ(何か装備しちゃってる!!)

ロキは我が目を疑いました。
手ぶらだったはずのトールが、力帯を身に着け、棍棒を握りしめているではありませんか。

ロキ『と、トールちゃん、その装備どったの?(;’ヮ’)』
トール『グリッドに貸して貰ったんだ』
グリッド『近距離パワー型同士、話が弾んじゃって^^』
ロキ『ふ、ふ~ん、そうなんだぁ~。。。』
トール『女物の装備を使ってる俺も意外性あるよな?』
ロキ『えっ、うっうん!まさにギャップ萌え~って感じ?!(;’ヮ’)+』
グリッド『……』

その場には一瞬にして、ただならぬ緊張が走りました。

考えるロキ
ロキ(やばいやばいやばいって!このクソ女、余計なことしやがって/(^o^)\ コロス!!
どどどどどうする俺!
…いや、ゲイルロドの野郎が言ってたのは
『雷神トールだ。奴をこの館に連れて来い!ミョルもメギンも装備しない状態でな!』
…だったし。
E:グリッドの棍棒 E:グリッドの力帯 の雷神トールならギリギリセーフだろ。多分。
ミョルじゃないし、メギンでもない!うむ!
あとは条件的にトールをゲイルロドん家に連行しねーと100%奴に殺されるから、とりあえずこのまま行くしかねぇ!)

考えるトール
トール(叔父貴は、ゲイルロドが俺を狙ってるって知ってるのか…?
また裏切って巨人の手先やってんのか?今のうちにボコボコにしちまうか?
でも美人な俺のファンが待ってるのは本当かも知れねーし、とりあえずこのまま行くしかねぇ!)

トール『それじゃまたな~!』
ロキ『出発おしんこ~!(; ゚∀゚)』
グリッド『道中、気を付けてね!』

二人の神はそれぞれの思惑を胸にしながらも、『とりあえずこのまま行くしかねぇ!』で一致していました。
ですから、お互いに何食わぬ顔で旅を再開したのです。

暗雲たちこめる旅路に待ち受ける、壮絶な運命とは…!?
投槍北欧神話・第35楽節 『空を旅する者と雷神・6』に続きます。

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