第44楽節『神々の酒宴・4』

漢達の熱き戦いが始まる!!

第44楽節『神々の酒宴・1』
第44楽節『神々の酒宴・2』
第44楽節『神々の酒宴・3』


今は昔。
酒鍋を獲得すべく、巨人ヒュミル宅へ訪れた雷神トール&戦神チュール。
チュールの実父や実祖母は神々に辛く当たりますが、チュールママだけは力になってくれます。
不穏な晩餐ではトールが一人で牛2頭もたいらげ、ヒュミルは度肝を抜かれたのでした。


ヒュミル(あんの糞ガキめ~~、これ以上はビタ一文たりとも飯をおごってやらんからな~~!!)

家計に大損害を被ったのですから、ヒュミルは怒り心頭でした。
しかし北欧神話界では『客人に飯を提供しないのは、貴人の恥』とかそんな価値観らしいので、トールに断食強要はできません。
そこでヒュミルは一計を案じたのです。

翌日の事。


ヒュミル『そこの若いの!沖へ釣りに行くから、お前も来い!』
トール『おー、釣りかぁ。いっちょやってみっか^^』

このまま自家製ビーフを食べ放題されたらヤバイ!と恐れたヒュミルは、トールを釣りに誘ったのです。
トールは豊穣の神様ですから、釣りも好きそうですよね(・ω・)
大乗り気で支度を始めたのですが…

ヒュミル『釣具はウチのを貸してやる』
トール『あれ?親父さん、餌がねぇぞ??』
ヒュミル『あァ?なら、牧場へ行って牛の餌でも糞でも、好きに取ってくれば良かろう』
チュール『……』

ここで餌が見当たらなかったのは、ヒュミルのプチ嫌がらせ(多分)
餌がなければ釣りは…できない事もないけど、やっぱ非効率です。
雷神様は牧場へ足を向けました。

~ヒュミル牧場~

黒毛牛『モォ~~~』

そこにはヒミンフリョートという黒毛の雄牛がのんびり草を食んでいました。
(※ドット絵ではミノタウロスですが、原作ではフツーの牛です)
この名は『天の吠え手』という意味で、お肉がたっぷりついた立派な個体だったそうな。
大層な命名だし、きっとコンテストで受賞する様な血統の優れた牛さんなんでしょう。

トール『おっ、良い牛じゃん♪』
ヒミンフリョート『モ?』

トールはさっそくヒミンフリョートに目をつけました。
そして……。


トール『そいやァっ!(ブチブチッ!』
ヒミンフリョート『ン゙モ゙ーーー!!』

何という事でしょう。
雷神は釣り餌とするべく、ヒミンフリョートの頭を怪力でねじ切ってしまったのです。
ひっでぇ/(^o^)\
まぁ、ちょっと好意的に解釈すると、北欧の神々は馬とか牛の生き血を捧げられてたそーなんで、神様であるトールには割と軽い感覚だったのかも知れません。
それにタングリスニ&ニョーストを復活させる力(第41話参照)もあるし、この牛も後で復活……、いや、釣り餌だし骨を遺失・損傷しそうだから無理か。

トール『準備オッケーだぜ★ミ』
ヒュミル『あああああああ!!ワシのヒミンフリョート!!!』
チュール(やると思ったwww親父ざまぁwwww)

ヒュミル牧場の被害牛数が1頭プラスされました。
これは流石にかわいそう(ノ∀`)
この後、残った首から下のお肉はどうなったんでしょうか。
原作に特筆ありませんが、やっぱ食べられたのかな??


こうして神と巨人は大海原へ繰り出したのです。
舟が妙にファンシーなのは、ROにあんまり船系のグラフィックが無いから。
仕方なかったんや。マウスで舟を描くのはもう嫌や(⊃д⊂)

さて。
神話公式設定によるとヒュミル氏は海の巨人で、居宅はエリヴァーガル水源(第42話参照)の近くなんだってよ。
海の巨人といえば、シリーズ序盤に登場したエーギルも海系の巨人です。
ヒュミルとエーギルは出自が近かったりするのかな?

しっかしエリヴァーガルの水って毒を含んでいて、その毒から巨人発生……とか言ってたよね。
その付近の海産物って食べても大丈夫なんだろーか。
すっげー汚染されてそう。

なお、この釣りPTにチュールは参加していません。理由は不明。
神と巨人の奇妙なコンビは、本日のメインディッシュを求め、櫂を漕ぎ漕ぎ、沖へと辿り着きました。
海面下には沢山の魚群が透けて見えます。
これは期待大だ!

しかし……。

ヒュミル『この辺で釣るかの』
トール『えー。景気良く、ガツンと遠出しようぜ!(ギッコギッコギッコギッコギッコギッコギッコ!』
ヒュミル『ちょっ、まっ…いい加減にせんか!;;』

トールは張り切って大洋のド真ん中まで漕ぎまくりました。
遠洋漁業は現代でも海難事故の危険がある大変なお仕事です。
大昔の素朴な造りの舟じゃ、もっともっと危ないですよね。

ええ。海には本当に危険が潜んでいるのですよ。
それはすぐに分かります。


巨人の親父は舟縁から、釣り糸を水面に垂らしました。

ヒュミル(小癪な糞ガキめ、ワシの華麗なフィッシングテクを見とれよ!)

さっき言った通り、ヒュミルは海の巨人。
実は漁業が大得意。
トールに散々、嫌な目に遭わされていましたから、ここいらで一泡吹かせたいと思っていたのです。

ヒュミルが巧みに竿を動かしてやると、たちまち糸の先に手応えを感じました。
すかさず引き上げると……


何と2頭のクジラ!!

……。
いや、一口にクジラと言われても種類いろいろですよね(^ω^;)
現実世界最大の生物シロナガスクジラは34mに達する個体がいます。
かと思えばオガワコマッコウは2mくらい。
クジラとかイルカって、バリエーション豊富すぎるんよ。
一体どの程度のボリューム感で想像すれば良いのか。

ノルウェーやアイスランドでは古くから捕鯨が行われてきました。
日本とおんなじだね(・ω・)
伝統的な捕獲対象はミンククジラ(4~7m)とかゴンドウクジラ(7~10m)みたい。
まぁ、原始的な人力捕鯨ではこの辺が限界だよな。
20mを越す大型クジラをばんばん捕獲するのは、20世紀に近代的な漁船や釣機械が開発されてからだそうな。

しかし今回の場合、釣り人は一般人ではなく、ボス級巨人のヒュミル氏です。
シロナガスクジラを釣り上げても何ら違和感ありません。
悩んだ末に、『超スゴイ巨人ヒュミルが捕獲したのは、30m以上の巨大クジラ』でFAにします。

トール『お~、すっげぇ大物じゃん♪』
ヒュミル『クックックッ、恐れ入ったか若造!』

巨人はトールの鼻を明かせてやった!と悦に浸っていました。

トール『んじゃ、俺も負けてらんねぇーな!』
ヒュミル(ププーッ!wwお前は既に負けておるわwwこっちの獲物はクジラじゃぞwwそれも2頭同時ww完全に勝ち確定じゃww)

先程も申し上げた通り、クジラは現実世界での最大生物。
しかもダブルです。
もはやヒュミルの勝利は揺らぎ無いものに思えます。

……いいえ!
この世界においては、決してそうではありません!

トールはもぎたてほやほやの牛ヘッドを釣り針に掛け、海に放りました。
そして全神経を釣り竿に集中し、獲物の到来を待ちます。
しばらくすると、水の下で糸がぐいぐい反応するではありませんか。

ヒュミル(プスーッwwどうせ長靴とかじゃろww)

雷神は両足を踏ん張り、釣り竿を握り締めます。
竿は何度も大きくしなり、右へ左へと穂先の向きを激しく変えました。
トールが力いっぱい釣り竿を引くと、遂に獲物が水上に姿を見せたのです。

糸の先に掛かっていたのは……

 

それは…それは……!

 


ヨルムンガンド『グギャアアアアアアアアア!!』
トール『っしゃあああああ!』
ヒュミル『な、何じゃとーー!??!?!』

イグドラシル世界の最大最長生物!
世界蛇ミッドガルズオルムこと、ヨルムンガンド!!

かつて海に打ち捨てられた蛇は、ミッドガルドの外洋をその巨躯でぐるりと一周取り囲み、己の尾を咥える程にまで成長していました。
原作では『最大最長』とは銘打たれてませんけど、外洋一周って事は数千kmありそーなんで、ヨルムン=最大最長認定しておりまっす。

ロキの息子ヨルムン君、超久々に登場だ(・ω・)
美味しそうな牛のニオイにまんまとおびき寄せられ、釣り上げられちゃうなんて、父親に似て食い意地が張ってますな。
『海老で鯛を釣る』という諺がありますけど、北欧神話では『牛で世界蛇を釣る』!

ヨルムンガンドは顎に鋭い釣り針が突き刺さり、更にトールの馬鹿力で無理に引き寄せられているものですから、苦しくて堪りません。
何とか逃れようと体をくねらせたので、辺りの波は一気に荒れ狂いました。

ヒュミル『あばばばばばばばば』
トール『よーし、トドメを刺してやるぜ!』

フツーの釣りでは獲物の全身を舟に揚げてフィニッシュですけど、流石にヨルムンガンドの巨体をまるごと引きずり出すのは不可能。
そこでトールは……


釣り竿を戦槌ミョルニールに持ち替えます。


トール『オラァ!!(ドゴッ!』
ヨルムンガンド『ギャーーーーーッ!!』

ヨルムンガンドの脳天めがけて渾身の一撃!
しかし大ダメージを受けながらも、恐ろしい事に世界蛇はまだ生きていました。
激痛にのたうち回ると、頭を大きく振ります。
すると勢い余って顎の肉が引きちぎれ、大蛇は釣り針から開放されたのです。
そのまま這々の体で波の彼方へと逃げ泳いだのでした……。

俺のカウントでは、トールの近接打撃を受けて生き延びた者は今回のヨルムンガンドのみです。
舟の上という不安定な足場だったので、踏ん張りがきかなかった…と推理しております。

トールとヨルムンガンド。
彼らの決着は神話末期まで持ち越され、ラグナロク時に一騎打ちとなる、言わば宿敵関係。
オーディンVSフェンリル狼、ロキVSヘイムダルに相当する伝説のマッチです。
そのカッコイイ因縁の対決がビール目当て冒険譚のしょーもない横道エピソードで披露されたのでした。
もっと他に無かったのかよ。


トール『ちっ、逃したか。俺だけボウズかよ~』
ヒュミル『……』

トールは釣果こそありませんでしたが、この様に持ち前の超パワーでヒュミルを圧倒したのです。
格の違いをまざまざと見せつけられた巨人は、もはや何も言い返せません。
しかし語り部である俺は一言だけ問いたい。

トールよ、お前はヨルムンを喰うつもりだったのか?

ヨルムンガンドは猛毒を宿す蛇なので、中毒死しそーですけど。
いや、我が国ではフグを食べる文化あるし…。
いやいや、ていうか巨大怪獣だし、ロキの息子だし……。

ともかく漢達の釣り対決は幕を閉じたのでした。
肝心の酒鍋は結局ゲットできるのか?

第44楽節『神々の酒宴・5』につづく!

【お断り】
この釣り対決の部分はヴァージョン違いのお話が存在します。
今回はテキトーに合成いたしました。
本当なら色々補足したいとこなんスけど、面倒いのでシリーズが終わったらにします(先送り)
 

【おまけ】
~その頃のチュール~


チュール母『チュールちゃんがぁ~目からビームでパパに対抗するのはどうかしらぁ~??』
チュール『何言ってんの、母さん。僕は目からビームなんて出ないよ、化け物じゃあるまいし』
チュール母『うふふ

チュールは釣りに同行してないよーなので、きっと家でママと作戦会議してたんですよ。
こんな話は絶対してないと思いますが。

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