第30楽節『悪戯の代償・8』

小人ブロック
投槍北欧神話・第30楽節『悪戯の代償・1』
投槍北欧神話・第30楽節『悪戯の代償・2』
投槍北欧神話・第30楽節『悪戯の代償・3』
投槍北欧神話・第30楽節『悪戯の代償・4』
投槍北欧神話・第30楽節『悪戯の代償・5』
投槍北欧神話・第30楽節『悪戯の代償・6』
投槍北欧神話・第30楽節『悪戯の代償・7』

『悪戯の代償』は最終回(・ω・)ノ


エイトリ&ブロックおめでとう!!
今は昔。
神の国アースガルドで鍛冶の腕を競う、名声ブラックスミス世界王者決定戦が開催されました。
ロキの度重なる妨害に遭いながらも、雷槌ミョルニールの性能が認められたエイトリ&ブロック兄弟が優勝。
優勝賞品としてロキは「自分の頭」を賭けていたものですから、さぁ大変。
約束通り、ロキは首チョンパされてしまうのでしょうか…?

フレイ『それでは優勝チームに賞品の授与を行いたいと思います(-∀-`)』
オーディン『フフフ…』
トール『叔父貴の頭いっちょ!』
ブロック『まいど!ヽ(`ω´)』
ロキ『まっ、待て待て待て。話せば分かる!お…俺の頭なんか貰ったって一文にもなんねぇだろ!?』

元々、命を差し出すつもりなんて無かったロキは、浅ましく命乞いを始めました。

ロキの頭と同じ重さの黄金
ロキ『こうしよう。代わりに俺の頭と同じ重さの黄金をやる!その方がお得だろ!?なっ?なっ?』

成人男性の頭は約5kg。
2012年6月現在の金相場は1g=約4300円なので、ドンブリ勘定で5kgの金塊=約2000万円以上となります。
神話世界においても、ひと財産と呼べる額に違いありません。
しかしロキの提案に、小人はキッパリと言い返しました。

ブロック『あんさん、仕事しない神で有名ですやん。んな金塊、持ってへんでっしゃろ!m9(`ω´)』
ロキ『ギクッ!!Σ(‘ヮ’;)』
オーディン『全くだな…』
フレイ『ホントですね…』
トール『余計な仕事は増やしてくれるけどな!』

はい。即座に嘘を看破されました。
オーディン等の有力な神々と違い、ロキには金持ち設定がついてません。
イーヴァルディJr.兄弟に支払うカツラ代金をロキが持ち合わせていなかったために、おべっかで宝物を巻き上げちゃえ☆大作戦に至った訳ですからね。
例えロキに金があったとして、小人達は自前で黄金を練成可能なので、金品による懐柔を試みること自体がムダ。
ちゃんとお金を持っているフレイヤも、金銀でのブリーシンガメン買取を小人から拒絶されました(第8話

その上、今回エイトリ&ブロックが気合を入れて宝物を製造した動機は「ワテらをコケにしよったロキぶっ殺したる!(`ω´#(`ω´#)」の一念でしたもの。
ムリムリ。土台ムリ。
という訳で、ブロックは優勝賞品の代替に頑として応じません。
流石のロキも交渉を諦めるしかないのです。

ロキ『よし分かった。頭はやる……!やるが……』
ブロック『やるが?何やねん(`ω´;)』

ロキ「頭の受け渡しは10年後20年後ということも…」
ロキ『今回まだ、その時と場所の指定まではしていない!そのことをどうか諸君らも思い出して頂きたい』
ブロック『ハァ?!(`ω´;)』
ロキ『つまり…俺がその気になれば、頭の受け渡しは10年後20年後ということも可能だろう…ということ…!』
神々『ざわ……ざわ……』

ロキは言い終わるや否や…

逃げるロキ、爆笑する神々、トールに泣きつくブロック
ロキ『つー訳で、ほなさいならーー!!⊂二二二( ^ω^)二⊃ブーン!』
ブロック『に、逃げよったー!!ΣΣ(`ω´;)』
神々『やると思ったwwwwwwwwwwwm9(^Д^)プヒャヒャー』

判定見直しも賞品変更も不能と悟ったロキは空飛ぶ靴を使って、グラストヘイムから飛び立ったのでした。
物見高いアース神達は、この逃走劇に大喜び。
お腹を抱えて馬鹿笑いしました。
笑えないのはロキにおちょくられた挙句、頭をもぎとる約束を反故にされたブロックです。
しかし、どんなにいきり立っても小人の鍛冶屋には、空飛ぶ神を捕らえる術がありません。
そこで彼は雷神トールに助力を仰ぎます。

ブロック『トールはん、こんなんアリでっか!?契約不履行でっしゃろ!(`ω´;)』
トール『おう、任せとけ!』

今回、憤懣やるかたない立場だったトールは、のっしのっしとグラストヘイムの外へ歩み出て…

ロキに向かってミョルを投げるトール
トール『ミョルニール投げ !!』

上空を遁走中のロキめがけ一直線にミョルニールをブン投げました。

ひゅーん!
ドカッ!
ひゅるるるる…
ドサッ…

アースガルドのエース軍神が狙いを違えるはずもなく、見事にロキを撃墜。
ギャアギャア泣き喚くロキの首根っこを引きずって、トールは広間まで戻って来たのです。

ロキ『うわーん、何てことしやがる!死んだらどーすんだ!!。・゚・(ノД´)・゚・。』
トール『うっせ!手加減してやったんだから感謝しろよ!』
ブロック『死んだらもクソも、あんさん死ぬの確定やで!!(`ω´#)』

(※原典ではミョルを投げたりはしてません。脚色です(*’ヮ’)o)

逃走の企ても失敗したロキは、いよいよ進退きわまったと認めざるを得ません。
ふん反り返って、こう宣言しました。

ロキ『わーったよ、俺も神の端くれ…今この場で頭をくれてやる!』
ブロック『ほな、さっさと切り取って床の間にでも飾らせて貰うわ』
ロキ『頭はやる……が首は1ピコグラムたりともやらん!
ブロック『何やて!?(`ω´;)』
ロキ『頭の切除手術で、首の皮膚・筋肉・神経・血管をちょびっとでも傷つけたら契約違反だ!』
オーディン『うぅーむ…。まぁ、確かに契約書面には「ロキの頭部」としか記載が無いな…』
ロキ『だろ?wwだろ?wwww』
ブロック『ぐぬぬ…』

何という見苦しさでしょう。
なりふり構わないロキは、シェイクスピア戯曲『ヴェニスの商人』の有名過ぎる屁理屈「心臓の肉はやるが、血を一滴でも流したら契約違反」みたいな論法を展開し始めたではありませんか…。
きっと古今東西どの社会でも、法や契約の網目を潜り抜けようとする姑息な輩が後を絶たなかったって証左でしょう。
『ヴェニスの商人』の金貸しシャイロックは、この屁理屈論法に負けて債権放棄しました。
小人ブロックも諦めてくれるのか…と思いきや。
ところがどっこい、北欧神話キャラの取立てはもっと苛烈でした!

ロキの所有権
ブロック『オーディン様、「ロキの頭部」はワテら兄弟に所有権あるんでっしゃろ?』
オーディン『うむ。それは大会優勝時点より、汝らに権利移譲されている』
ブロック『ほんなら、よぅ喋るアカンタレなクチを縫い閉じたるわ!(`ω´#)』
ロキ『エッーーーーー!?Σ(゚Д゚;)』
オーディン『そうだな。口唇は頭部を構成する一要素であるから、法的に何ら問題なかろう』
ロキ『お義兄様、ちょっとは義弟の味方をしろwwwwwwwwww』

ブロックは頭部切断を諦める代わりに、ロキのクチを外科的処置で封じると言い出したのです。
シェイクスピアもびっくりだ。
本気の小人はキレイに磨かれた短刀を取り出し、構えました。

ブロック『これで唇に穴ボコ開けて、紐を通してギューギューに縛ったる!(`ω´)』
ロキ『や、やれるモンならやってみやがれ…(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル』

そして刃がロキの顔面に向かって、迷い無く振り下ろされます。

ブロック『どりゃあぁぁあぁぁ!!(`ω´#)』
ロキ『ストーンスキン !!(カキーン!』

しかし完全防御態勢に入ったロキが肌を石の如く硬化させたので、刃がまるで通りませんでした。
ナイフで何度斬っても突いても、頑強な皮膚には穴どころかミミズ腫れすらできなかったのです。

ブロック『ハァーハァー、どこっまでも…小ざかしい奴っちゃな…(`ω´;)』
ロキ『ざまぁカンカン!ベロベロバー!ヽ(`∀´)ノ』
ブロック『あかん、このナイフは通じひん。他に良ぇ武器は…っと…』

ブロックは何か使えそうな物が無いか、荷物の中を探ります。
すると鞄の奥に、見覚えの無い包みがありました。

エイトリの錐
中を開いてみれば、そこには一本の錐と一枚の便箋が。

『ブロックへ ロキはチート野郎やさかい、有事の際にはコレを使うんや by兄』

ブロック『グッジョブやで、兄貴!(`ω´*)』
ロキ『エェエェェー!?Σ(゚Д゚;)』

神々を驚嘆させる宝物を鍛えた小人兄弟。
その兄エイトリ秘蔵の錐は、切っ先が細い糸の如く研ぎ澄まされて、どんな硬い物質でも貫けそうです。
遠い小人国に留まっている兄に心から感謝し、ブロックは錐を握り締めました。

ロキ『すっ…ストーンスキン !!』
ブロック『ぬぅおぅぉぉぉおぉおりゃあぁあぁぁあああ!!(`ω´#)』

ザクッ!

錐で顔面に穴を開けられるロキ
ロキ『ふんぎゃあああああああああああああああああーーーーー!!?』

グラストヘイムに鮮血の飛沫が上がりました。
名工エイトリの隠し武器は硬質化したロキの唇をものともせず、しっかり貫通したのです。
錐は北欧神話にたびたび登場するアイテムなのですが、RO錐の『防御力が高い相手に効果的』という仕様は、この神話から設定されたんじゃないかなって思います(・ω・)

ブロック『おっ、イケるやん!ほんなら、がんがんイクで~~~!+(`ω´*)』

ザクッ!ブシュッ!ドシュッ!ブスッ!ズシュッ!グシュッ!ザシュッ!ドスッ!ビシュッ!ブシャッ!

ロキ『ぎゃぴあぁあやああああああああああああああああーーーーー!!!!』

それは一方的で容赦も絶え間も無い処刑でした。
ロキは上下の唇を端から端まで穿孔され、凄まじい苦痛に煩悶します。
傷口から血液がドクドクと噴出し、彼の顔面下半分は真紅一色に。
仕上げにブロックは穴へ革紐を通し、ブーツを編み上げるかの如く、きつーく縛り上げて…

おクチ☆チャックされたロキ
ロキはリアルに「おクチ☆チャック」されちゃったのでした。

ロキ『ん゙む゙~~~ッ!ふむ゙む゙む゙~~~ッ!』
神々『神wwwがwwwおクチwwwチャックwwwありえねぇwww』
ブロック『フン!この辺で勘弁したるわ!ε=(`ω´#)』
トール『心から反省しろよ、叔父貴!』
オーディン『やれやれ…これに懲りて馬鹿な悪戯は止めにしておくんだな』

ロキは女神シフの髪を刈った代償を、調子の良い弁舌だけで賄おうとしました。
しかし最終的には、最大の武器である口を縫い閉じられるという手痛い代償を支払うハメになったのです。
これほど自業自得、因果応報という言葉が相応しい顛末もありませんね。

ロキ『ゔえ゙え゙~~~~~~~ん゙!!。・゚・(ノ皿`)・゚・。』

痛みと恥ずかしさ、情けなさの余り、ロキは泣きじゃくってグラストヘイムから逃げ出します。
ブロックの要求通り唇を縫合し終えたので、今度は誰も追いかけて来ません。

神々『ロキの不幸で酒が美味いwwwwwwwm9(^Д^)プギャアー!』

シフ&トール以外の神々は、自分達に被害があった訳でもないし、久しぶりの大見世物に満足。
酒を酌み交わしながら、グングやミョルの素晴らしさ、ロキの滑稽さについて歓談します。


溜まり場から遠く離れた所で、一人ぼっちのロキは唇を戒める紐をブチブチと千切り捨てました。
口は動く様になったものの、唇上に列をなす穴はしばらく治りそうにもありません。

ロキ『ううっ、痛い!酷い!顔は北欧神の命なのに…あんまりだっ!。・゚・(ノД`)・゚・。』

妖しい美貌が御自慢のロキは、この無様な傷をえらく根に持ったそうな。
最初に女の命である髪を削ぎ落としたのは一体どこのどいつかと…。

今回の教訓:良い子は人妻の頭を丸刈りにしたり、高額アイテムをタダで巻き上げてはいけない。

権謀術数が渦巻く北欧神話にしては珍しく、ロキの奸智が敗北する勧善懲悪なお話でしたとさ。
めでたし、めでたし。

……完結したと見せかけて、裏エピソード編へ続く!m9(・∀・)

コメントする

CAPTCHA