第30楽節『悪戯の代償・4』

マッチポンプ男ロキ
投槍北欧神話・第30楽節『悪戯の代償・1』
投槍北欧神話・第30楽節『悪戯の代償・2』
投槍北欧神話・第30楽節『悪戯の代償・3』

ロキの悪巧みスキルが冴え渡る。


エイトリ&ブロックを怒らせるロキ
今は昔。
ロキは巧みな話術を駆使し、小人のイーヴァルディJr.から無料で製造アイテムをせしめました。
これに味を占めて、同じ手口でもう一儲けしてやろうとエイトリ&ブロック家を訪れたのです。
今度は誉めそやすのではなく、煽り立てることで彼らをその気にさせて…?

エイトリ『コレでも飲んで、大人しく待っとるんやで!旦 ⊂(`ω´#)』
ロキ『ハーイ(*’ヮ’)ノ旦』

製造を待つロキに一杯のビールを渡し、小人の兄弟は工房に入ってゆきました。
悪戯者の神が本当に大人しくしているハズもなく。
盃には目もくれず、二人の姿が広間から消えると…

ロキの変身
ロキ『メタモルフォーゼLv1 !!』

十八番の変身術でアブに化けたのです。
そして、ぶんぶんと嫌な羽音をたてながら、製錬所へと続く扉の隙間に潜り込みました。
羽虫の姿で天井から見下ろすと、高価そうな黄金や銀の製造材料を両手に抱えた小人兄弟が忙しく働いている姿を望めます。
アブは小さな体躯に加え、空中でホバリングやバック進行ができる昆虫。
偵察にはもってこいの変身でしょう。

精錬所の中
エイトリ『よっしゃ、準備完了や。いつも通り、ふいごは任せたで!(`ω´)』
ブロック『おう、最高の火加減にしたる(`ω´)+』

「ふいご」とは炉に新鮮な空気を送り込んで燃焼温度を保つためのポンプのこと。
空気が足りなくて炉が冷めると、金属の成形が途中のまま固まっちゃったり、不純物の熔解&分離が不十分で穴開きやヒビ割れの原因になります。
鍛冶屋さんにとっては仕事の出来を左右する大事な道具なんですね。
リアル歴史的には足踏み式・風車式・水車式など様々な形状が存在しますが、ここで使われているのは手押し式ふいごです。
絵を描くのは面倒いんでGoogleでイメージ検索して下さい。
弟ブロックがふいごポンプを押して炉温管理する担当、兄エイトリが熱せられた金属を鎚で打って成形する担当。

まずは第一の製造。
エイトリは長い黄金のワイヤーを小さく切り分け、無数の針を作りました。
そして綺麗になめされた豚の革を広げると、その面に作りたての針を次々と刺してゆきます。
これは黄金の剣山か絨毯?いえいえ…。

エイトリ『ほな、仕上げに入るさかい、炉の温度MAXや(`ω´)』
ブロック『オッケーや!(`ω´)ゞ』
ロキ(チャーンス!)

絶対に手の離せない局面に入ったと見るや否や、ロキの変化したアブは、ふいごを押しているブロック目がけて一直線に飛んでいきました。
そして…

アブ『ぶーーーん!チクッ!』
ブロック『!?(`ω´;)』

作業に勤しんでいるブロックの手の甲に止まると、その肌に鋭い口吻を刺し、吸血したのです。
何と卑怯な男でしょう。
名声ブラックスミス世界王者決定戦なぞと持ちかけておきながら、イーヴァルディを超えるアイテムを製造させないよう、エイトリ&ブロックの精錬を邪魔したのです。

アブは吸血昆虫としてよく知られています(※アブ科で吸血性の種はごく一部だけど)
実際に刺された人いわく、「くっそ痛い!ハチかと思った!!刺された後、めっちゃ腫れたし!!」らしい。
ロキは隠密機動性のためだけでなく、明確な攻撃意図をもってアブに変身したんですね。
そんなショックでふいごを押す手が止まってしまったら、前述の通りデリケートな精錬は失敗してしまいます。
しかし幸いなことに、毎日鍛冶仕事に励んでいるブロックの手は職人らしく皮膚が分厚くなっていたので、刺されても全然痛みを感じませんでした。
虫刺されを意に介すこともなく、彼はふいごで炉に風を送り続け…

黄金の猪
エイトリ『第一のアイテム完成やで!!』

エイトリが溶鉱炉から豚の革を引き上げてみれば、何ということでしょう。
匠の技により、それは金の体毛を持つ生きた猪となっているではありませんか。
逞しい牙と蹄をそなえた猪は、金色の輝きを放ち周囲を明々と照らします。
小人のBSは人造生命まで創れるんですね!
北欧神話において鍛冶屋は錬金術師と同義です。

次に第二の製造。
エイトリは上等な黄塊を熔かし、輪っかの形に整えました。
続いて、表面に美しい紋様を刻み込んでゆきます。
これはどうやら装飾品の様です。

エイトリ『ほな、仕上げに入るさかい、炉の温度MAXや(`ω´)』
ブロック『オッケーや!(`ω´)ゞ』
ロキ(さっきはしくじったが、今度こそ…)

アブは性懲りも無く、再びブロック目指して飛び立ちました。

アブ『ぶーーーん!チクッ!!』
ブロック『痛ッ!?(`ω´;)』

ずる賢いロキは狙いを変え、角質化した手ではなく、首筋の柔らかい肌を思いっきり刺したのです。
これにはブロックも激痛を覚え、顔をしかめました。
しかし痛みの中、プロ根性でふいごをプッシュし続けたので…

黄金の腕輪
エイトリ『第二のアイテム完成やで!!』

エイトリは炉から世にも美しい黄金の腕輪を取り出すことができました。
一番目と違って、意外と普通な鍛冶製品?
しかし腕輪からは何だか不思議な魔力が感じられます。

お終いに第三の製造。
エイトリは大きな鉄鉱石を真っ赤になるまで熱しました。
それを金槌でカンカン叩き、鍛え上げてゆきます。
重たげな頭に長い柄が付いた、T字形の物です。
このアイテムは武器か工具のようですね。

エイトリ『ほな、仕上げに入るさかい、炉の温度MAXやで(`ω´)』
ブロック『オッケーや!(`ω´)ゞ』
ロキ(三度目の正直!!)

アブはやっぱりブロックを目指して飛び立ちました。

アブ(ロキ)に刺されて大出血
アブ『ぶーーーん!チクッ!!チクッ!!』
ブロック『ギャアアアアアアア!!目が!!目がァァアァァ!!』

アブはブロックの目の上に止まると、左右の瞼を二連続で刺したのです。
ストロー状の口吻を刺して吸血する蚊と異なり、アブの吸血原理は「ナイフ状の歯で皮膚を切り裂き、溢れた血を舐める」という荒っぽいもの。
一方、瞼は顔で最も薄く敏感な皮膚です(※女性誌のメイク記事による情報)
痛みもさることながら、勢い良く流れた血によって小人は目潰しを喰らってしまいました。

ブロック『さっきから何やねん、このアブ!シッシッ!(#`ω´)ノシ』
アブ『ぶーーんぶーーん』

一瞬でした。
ほんの一瞬だけ、ブロックの手はふいごを離れて、両目の血を拭い、顔から虫を振り払いました。
しかし緻密な精錬作業にとって、それは大き過ぎる間隙だったのです。
ふいごが送風を止めた途端に炉の炎が弱まり、製造アイテムは急速に冷えて固まり始めます。
柔軟性を失った金属に、エイトリの金槌が打ち込まれたので…

バキーン!

無情にも金属の砕け散る音が、工房に木霊しました。

エイトリ&ブロック『し、しもたーーー!!?ΣΣ(`ω´;(`ω´;)』
ロキ(よっしゃああああ、ざまああああああああ!!)

遂に卑怯者の妨害工作が成功してしまったのです。
ロキアブは心の中でガッツポーズすると、来た時と同じ様に扉の隙間へ滑り込み、広間へと飛び去りました。

エイトリ『な、なんちゅーこっちゃ…ふいごを止めたから…』
ブロック『か、堪忍や…アブの奴が、しつこかったさかい、つい…』
エイトリ『アイテムが…アイテムが……』

鋼鉄の金槌
エイトリ『アイテムがあやうく失敗するところやったわww』

エイトリが炉から鉄を取り出すと、立派な金槌が無事できあがっていました。
金槌と言っても大工や鍛冶用ではなく、兵士が戦場で武器にするウォーハンマーです。
念入りに鍛えただけあって頑丈そうですが…先ほどのトラブルで、柄部分は途中で折れていました。

エイトリ『設計図より短くなりよったけど、イケるやろ』
ブロック『ホッ…』

完全なる失敗に終わらなかったのは不幸中の幸い。
しかし金槌というのは、重い頭部を長柄で大きくスイングさせて打撃力を増す道具です。
本当に短くても大丈夫なのでしょうか?

三種の宝物を見せる小人
名声ブラックスミス世界王者決定戦に出品する三つの宝物を創り終え、小人の兄弟はロキの待つ広間へと戻りました。

ロキ『お疲れ様ー、アイテム製造終わった~?^^』

狡猾な神は妨害工作を働いておきながら、素知らぬ顔で挨拶します。

ブロック『目ン玉飛び出る程、ものごっついのが出来たで!』
ロキ(ぷぷーっw折れたクセに強がっちゃってwwww)
エイトリ『ワテは仕事があるさかい、弟だけBS決定戦会場に行かせるわ』
ロキ『おkおk!そんじゃあ、早速アースガルドに向かおうZE!』

次回、名声ブラックスミス世界王者決定戦が本当に開催される!

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